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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
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286.枝落とし

 ――本当に任せても大丈夫なのかなぁ。


 なぜだか自信ありそうにしてるけど、マーロウにあの乱暴者(サギリ)を止められるとは思えない。

 普段でもそうなのに、良く分かんない術で反撃される今なんて無理に決まってる。

 そう思って無理だと言ったのに――

 聞く耳を持たないマーロウを説得するのは早々に諦めた。


 確かに――僕は頭上を見上げる。

 こっちの大樹よりは、そっちの乱暴者の方がマシかもしれないからね。


 見上げた視界一面に、枝先に灯った淡い光が重なる。

 その光景に少しだけ()()が呼び起されそうになったけど――今は。

 感傷に浸っている場合じゃない。


 マーロウの指し示した大樹の枝。

 進化樹と同じ形の枝の向こう。

 樹冠から突き出し異様な速度で伸びるその枝を、視線に捉える。


 ――400mぐらいかな?


 これぐらいなら余裕だね――と両後脚に力を込めて。


 ――あれ?


 ふと――違和感を覚えた。

 その正体は分からない。でも――そんなことを考えている暇はない。


 僕はそのまま跳び上がり、同時に『ポケット』の術を起動した。

 一つ、二つ、三つ――踏み込む先に次々と術を展開し、宙を駆けるように跳ね上がっていく。

 ――速く、速く。もっと速く。

 跳ねる度に速度を上げ、駆け上がる。


 ほどなく。

 目的の枝、僕はその根元に到達した。

 後はこれをどうにかするだけだけど――枝とはいえ、根元の直径は1m以上ある。

 簡単にへし折れてはくれないだろう。

 試しにそのまま尻尾で叩いてみたけれど、やっぱりびくともしなかった。


 ――だよね。


 僕は再び『ポケット』の術を多重起動する。

 尻尾の周りを、細分化した『ポケット』で覆いつくして。

 一辺だけには『ポケット』を集中させて――尻尾を振り上げた。


『アクスっ!』


 声と共に振り下ろす。

 斧の刃の様に『ポケット』を並べた黒い尻尾を。


 ――だけど。


『硬っ!』


 ゴンという重い音と共に。

 枝に刻まれた傷は僅か1cmにも満たなくて。

 その結果に目を瞑る。


 ――しばらく動けなくなるけど、仕方ないよね。


 決意と共に僕は――()()()()()を起動した。

 平衡を破り。ただ尻尾を振る力。それを生み出す筋力のみに、自らの能力を偏析させて――


『『ブレイク』っ!』


 目を開き、再び尻尾を振り下ろす。

 金色の混じる視界の中。

 先程と同じ位置に、黒に染まる尻尾を叩きこんで――


 ――それでも。


 刃が食い込んだのは、僅か5cm程だった。

 先程よりは大きく食い込んだけど――枝の直径に。断面の大きさに比べたら。

 挫けてしまいたくなる。

 でも――ここで止めるわけにはいかない。


 ――『俺達以外は全滅ってことだ』。


 先程のマーロウの言葉が、頭の中を跳ねまわる。

 その言葉に追われるように、僕は――尻尾を三度(みたび)振り下ろした。


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