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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
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282.理不尽

『助かった。リーフェ』


 マーロウの言葉に頷きを返す。

 ――いや。なんのことかはさっぱり分かんないんだけど、雰囲気で。

 それよりも――


『なぁマーロウ。なんだかさっきからみんな反応が無いんだけど――マーロウなら理由。分かるんじゃないか?』


 ――今はこっちの方が重要だ。


 この場にいるみんな――めんどくさそうな約一名は除く――に声を掛けてみたけれど、反応が有ったのはマーロウだけ。

 一体みんなに何が起こっているのか。そして、無事なのか。

 『助かった』と漏らしたということは、マーロウなら何か分かるかもしれない。

 そう思って聞いてみたんだけど――――


『――ん? ああ――別に悪いことにはならねぇだろ。心配すんな』


 それだけ言って、再び上を向く。


 ――いやいや。

 なんの回答にもなっていないからね?


 普段なら僕も『それなら大丈夫だね』と思うところなんだけど、今の状況は流石に異常だ。

 少しだけ声が大きくなった。


『悪いことって何だよ。それに――さっきの『頭の中に入ってくるな』ってどういうことさ。なぁマーロウ。一体何が視えたんだ? 今何が視えてるんだ?』


 だけど――返答はない。

 代わりにぶつぶつと呟く声だけが聞こえた。


『この枝は――いやこっちの――くそっ、またか――』


 ――あー。

 これしばらく回答は無理なやつだね。


 どうやら、また()()のに夢中になっているようだ。

 仕方なく、自分でなんとかしてみることにした。




 頭上を見上げたまま立ち尽くすサギリの元へと近付く。


『おい! サギリ! なんとか言えよ!』


 まずは耳元で大声を上げてみた。

 ――だけど、やっぱり何の反応もない。


 続いて尻尾で脇腹の辺りをつついてみる。

 初めは軽く。徐々に強く。

 ――サギリの体が揺れるほどつついたけど、反応はない。


『しかたないなぁ』


 仕方なく――そう、本当に仕方なく。サギリの横に回り、僕は尻尾を振り上げる。

 狙うは背中。

 痛みはほとんど無いところだけど、衝撃は十分に伝わるはずだし、これで目を覚ましてくれると思う。


『ひご――じゃなかった。ごめんサギリ!』


 ――だけど。

 僕の尻尾はサギリに触れることなく、地面を打ち。

 代わりに衝撃が走る――――僕の背中に。


 ――あれ?


 驚いて目の前のサギリを見たけど、相変わらず頭上の大樹を見上げたまま。

 だけどなぜだか僕の尻尾は、サギリの後脚の下にあって。


 あまりにもの理不尽さに。

 困惑するばかりだった僕は、そこでようやく気がついた。


 サギリの瞳が――いつの間にか銀色に染まっている事に。

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