278.紋様
諸事情により少し短めです。
――ニヤニヤ。
そんな効果音を発してしまいそうなほどに。
脚元を眺めた僕は、思わず――笑みをこぼした。
――けど。
『相変わらず気持ち悪いわね』
『――何だよ。欲しいんなら素直にそう言えよ』
背後から掛けられた面倒な言い掛かりに、先程までの高揚した気分が霧散する。
仕方なく脚元から獲りたての魚を差し出したけど――何だか溜息を吐いて去っていった。
まったく、勘弁して欲しい。
『おい、何やってんだよ。早く行くぞリーフェ』
憮然としていると、マーロウが声を掛けてきた。
小船を見つけた後――結局僕達は、トリム兄貴の術に頼ることになった。
――て言うか、話を聞いてみると前にも兄貴の術を使って海の中を移動していたらしい。
まったく、勘弁して欲しい。
――とにかく。
僕達は海を渡り目的の小島に上陸した。
それで調査はマーロウと原色おじさんに任せて、僕達は自由行動していたんだけど――
声を掛けてきたという事は、調査が終わったということだろうか。
さっさと背を向けたマーロウに、とりあえず返事しておいた。
『分かったけど――ちょっと待ってよ。これ皮袋に入れるから』
――――――
お魚を回収してマーロウの後を追いかけると、既にみんな揃っていた。
少々回収に時間を掛け過ぎたみたいだ。
「これで皆揃ったな」
原色おじさんの声に、みんな脚元を見る。
僕も釣られて脚元を見ると、そこには不思議な紋様があった。
これって――魔法陣?
そう思ってよく見ると、紋様が黒く染まっているのが分かった。
どうやら魔法陣自体は作動しているようだ。
でも――
『何も起こらないけど――これ何?』
僕の問いには誰も答えない。
代わりに――
「それではステュクスさん。お願いできますか?」
『ああ。分かった』
その言葉と共にステュクスおじさんの瞳が、脚元の魔法陣と同様に黒く染まった。
そして――次の瞬間、僕の体を身に覚えのある感覚が包む。
徐々に強くなるこの感覚は――浮遊感?
気付くと、僕達みんなの体は空に輝く淡い光の元へと――上昇を始めていた。




