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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
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277.最後の手段

 目の前に静かに広がる海。

 空からの淡い光に照らされ、時折煌めく水面だけがその動きを伝えている。


『ねぇ、マーロウ本当にこの先なの?』


『あぁ。この辺りに小船が係留してあるらしい。お前も探すの手伝ってくれ。リーフェ』


 どうやら、あの魔人族達から色々聞き出しているようだ。

 だけど――


『海を越えるんなら、トリム兄貴に頼めば良いんじゃないの?』


 トリムの兄貴が使う『ヴォイド』の術。

 お魚取り放題になるあの術を使えば、海底を歩いていけるんじゃないの?

 この辺りの海って、あんまり深くないみたいだし。


 そう思って気軽に言っただけなんだけど――返ってきたのは舌打ちだった。


『――あいつに頼むのは最後の手段だ』


 それだけ言い捨てて、一竜(ひとり)去っていく。

 原色おじさんも「まったく」と言いながら、後を追っていった。


 ――口の悪さとか、いつも自信でいっぱいなところとか。

 似てる所が多いし、何だかあだ名も付けてるし、なんだかんだ言って仲良くやってたのかと思ったけど――違うみたいだね。


『あの二竜(ふたり)、そんなに仲が悪いの?』


 傍らのユニィに聞いてみる。


「えーと。少しだけ――」

『特にマーロウが嫌ってるみたいね。私から見たら、どっちも同じようなものなんだけど』


 ユニィが言い淀んでいる間に、サギリが勝手に答えてきた。


『ふーん。話は合うと思うんだけどなぁ』


 予想通りではあるけれど、改めて聞くとちょっともやもやする――でも。


 ――ここでそんなことを考えててもしょうがないか。


 そう気持ちを切り替えて、マーロウに言われた通り小船を探すことにした。



 ユニィとふたり、海沿いを歩く。歩く。

 大勢いても仕方がないし、『面倒ね』と言いながら歩き回っていたサギリと、『任せた』と言って座り込んだステュクスおじさんはあの場に置いてきた。


 歩く。時に岩陰を覗き込みながら歩く。


『それにしても、全然見つからないね――『サーチ』でも無理だったし』


「仕方ないよ。小船って言っても、どんな形の船か分からないんだもん」


 ユニィとそんなことを話しながらも、なお歩く。


『そう言えばトリムの兄貴、ちゃんとこっちに向かって来れてるのかな?』


「うん。大丈夫だと思う。時々『サーチ』でこっちの位置を知らせてるから」


 そう言いながら、ユニィが『サーチ』の術を使う。

 僕はその光を目で追って――――って、あれ?


『ねぇユニィ。あそこに浮かんでるの――あれがマーロウが言ってた小船じゃない?』


「――うん。そうかも。でもあれって――」


 ユニィが言い淀んだのも分かる。

 だって、岩場につながれていたその小船。

 どう頑張っても――


「三にんぐらいしか乗れないよね?」



 ――うん。

 マーロウには悪いけど最後の手段が必要みたいだね。

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