276.白く淡く
展開都合上、少し短めです。
『まったく――男竜って、どうしてこうなのかしら』
いつものように。
またサギリが悪態をついている。
何が気に入らないのか知らないけど、勘弁して欲しい。
さっきからユニィも困ってるの、お前にも伝わってるだろ?
そんな気持ちを込めて軽く睨むと、思いっきり睨み返された――相変わらず理不尽だ。
『おい。じゃれてないで行くぞ』
マーロウの言葉に振り返ると、ステュクスおじさんとトリム兄貴は既に出発していた。
『そうだね。僕達も早く行こう』
僕も慌ててユニィに声を掛ける。
でも――あんなところどうやって行くつもりだろう。
空に輝く淡い光を見上げた。
それに――
マーロウの言っていた『あの光。多分お前のスキルとも関係あるぞ』という言葉。
その意味も気に掛かる。
『まぁ、行ってみればわかるよね』
ユニィが背中に乗ったのを確認して。
いつの間にか先を行くサギリの背を追った。
――――――
――本当にバカばっかりなんだから。
『ついでだから』と訳の分からない所に行こうとするマーロウも。
『進化の手掛かりがあるかもしれねーぞ』という言葉に釣られて従うリーフェも。
『良いんじゃね』とか『そのぐらい構わん』とか言って反対しないその他二竜も。
もうリーフェを連れ帰るという目的の大半は達成して、後は帰るだけのはずなのに――何故そういう発想になるかが分からない。
先導するマーロウの背中を見る。
そのまま睨みつけるようにじっ――と見ていると、その背中に振り下ろしたくなって、思わず尻尾を回してしまった。
すぐに気付いて自制する。
――ちょっとナーバスになってるのかも。
頭の中を切り替えようと、頭上の白い光を見た。
なぜだかは分からないけれど、あの光を見ていると――心が凪いでくる。
考えていたことが曖昧に。
でも、あの日の幼き決意は鮮明に――
自然と。
地面を蹴る脚にも力が入る。
『――速く。もっと速く――』
先程まで感じていたはずの怒りは――既に私の中から消えていた。




