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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
287/308

275.いつもの

『もう大丈夫?』


 10分ばかり泣きじゃくって。

 ようやく首から離れたユニィに問いかける。


「――うん」


 目はまだ真っ赤だけど――伝わる感情はその言葉通り。

 随分と落ち着きを取り戻したようだ。

 本当なら、このまま完全に落ち着くまで待った方が良いんだけど――


『それじゃあ――えーと。そうだ。ステュクスおじさんを紹介するよ』


 ――隙を見せるわけにはいかない。

 僕は間を置かずに声を掛けると、そのまま――聞こえる()()()()から目を逸らすように、ユニィを促し振り返った。


 ――はずなのに。


「――いやぁ。話には聞いていましたが。これほど高位の闇因子を持った脚竜族と会えるなんて、感無量ですね」


 振り返った先では。

 いつの間に来たのか、原色おじさんがステュクスおじさんに絡んでいた。

 薄暗いので色がはっきりとは分からないけど、相変わらずの原色――今日は黄色一色の服を着ているようだ。


「ところで、あなたのクラスは何でしょうか? 『ダークネスラプトル』とは違うようですし。それに、年齢は? 今までどこに住んでいたんですか?」


 ステュクスおじさんが、あの時の僕みたいに質問攻めにあっている。

 これはしばらく――無理そうだね。


『ごめんね、ユニィ。紹介しようと思ったけど、しばらく無理――』


 謝りながら、再びユニィの方に振り返ろうとして――背中に衝撃が走る。


『――って何すんだよ。サギリ!』


 振り返ると、再び尻尾を振り回すサギリ。

 どうやら、隙を見せてしまったようだ。

 抗議の意味も込めて睨みつけると、サギリが口を開いた。


『リーフェ。貴方もうちょっと皆に感謝しなさいよ』

『何言ってんだよ。ちゃんと感謝してるって』


『――そう? 『ありがとう』なんて言葉、私聞いてないけど?』


 ――思わず無言になってしまう。

 そう言われれば、ユニィにもまだ『ありがとう』って言ってない。

 だけど――このまま言うのはちょっとだけ癪な気がして。


 そのまま黙っていると――今度は背中を小突かれた。


『おいリーフェ。今回のはサギリが正しいだろ? 意地なんて張るなよ』


 言われて。ユニィを見て。

 僕は――気付いた。


『――ありがとう』


「うん――うん」

『ふん。言うのが遅すぎるのよ』


 ――でも、やっぱりちょっと癪かも。


 サギリに一言だけ文句を言う為に開いた口は――だけど。

 マーロウの言葉に遮られた。


『よし――合流もできたし、それじゃ()行くぞ』


 ――え?


 一瞬だけど、思わず思考が停止する。

 えーと。

 さも当然のような口ぶりだけど――一体何を言ってるの?

 僕だけでなく、ユニィからも困惑の感情が伝わってくる。


『は? ()っていったい何の話よ。後は帰るだけでしょう?』


『――そうだよ。帰り道は分かってるんだろ?』


 真っ先に反応したサギリに続けて、僕も何とか疑問を口にした。

 口にして――気付いた。

 そう。マーロウがこんな事を言う時は、いつもの――


『せっかくこんな所まで来たんだ。お前も()()。見てみたいだろ?』


 そう言いながら頭上を見上げるマーロウの顔は。

 『面白い物を見つけた』――そんな()()()()顔だった。



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