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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
285/308

273.リーフェの元へ

『まず驚いたのはその冒頭だな』


 俺の言葉に相棒が「ああ」と頷きながら、手帳に線を引く。


《かつて世界は球の如く丸く。世界は全て表であった。》


 ――世界の形は円環というのは誰でも知っている常識だ。そこに疑問を差し挟む余地はない。

 通常であれば、一笑に付すような話だ。

 事実、俺もかつてリーフェが同じような話をしてきた時、()()()()()だと判断し、訂正して返したことがある。


 俺も。恐らく相棒も。

 その前提で、なぜこの世界の裏側に彼ら魔人族が居るのか。それを引き出すつもりだった。

 だが――冒頭の言葉で、それら思惑は全て吹き飛んだ。

 その真偽はともかく、世界の成り立ちに係わる新しい知見。

 世界の形をも変える、創世ならぬ再世の物語。

 ――魔人族の目的などよりも、遥かに面白そうな話だったからな。



『――で、前半で気になるのは「異端」ぐらいなものか? 普通この手の話だと神が出てきそうなんだがな』


 こうしてまとめてみると、その内容はありがちな創世記のようにも見えるが、この話に神に類するものは登場しない。

 「異端」の存在が唯一それらしいが、世界に穴を開けただけの存在が神? そんな訳はないだろう。


 だが、こいつに関しては魔人族達もその真実を知らないようだ。

 老人に聞いてみたが「異端」に関しては「異端」としか伝わっていないらしい。

 この調子では、深く掘り返しても何も得られないだろう。


 むしろ――


「私は残されていたという、淡く光る種の方が気になるな。それが今も空に浮かんでいるんだろう?」


『そうだな。中盤で気になるのは淡く光る種だな』


 「異端」に関しては、何も残っていないので憶測するしか手はないが、この淡く光る種は違う。

 もしやと思って聞いてみたが、予想した通り。

 今も空の中央で輝いている光は、残されたその種が芽吹いたものだそうだ。

 彼らの間では「芯理の央樹」と呼ばれているらしい。「知識」と「秩序」の象徴だそうだ。

 


『後半は盛りだくさんだが――結局のところ、二手に分かれた()()が世界の安寧を維持してるって言いたいんだろ? んで、世界を裏側から支えてるのが魔人族――ってな』


 どうやら、この辺りの話が老人が伝えたかった話のようだ。

 こちらが質問する前に、聞いていないことまで丁寧に教えてくれた。


 老人の話では、彼等魔人族こそが世界を裏側から支えている一族――ということらしい。

 対になる一族と共に、この世界を維持管理しているそうだ。


 彼等魔人族は、100年~300年に一度、世界の表側にも遺跡の管理要員を送り出しているという話で、約100年前にも一人の同胞を表の世界へと送ったらしい。

 しかし――老人の話を聞いていて気付いたんだが、もしかするとその100年前に送った()()()()ってのが、リーフェ達が黒の遺跡で倒したっていう魔人なんじゃねーのか?

 ――まぁ確証はねーし、この場じゃ言えないけどな。




「お世話になりました。ご協力感謝します」

「ありがとうございました」


 相棒とユニィが見送りの魔人族達に深く礼をする。


『ねぇ。早く行きましょうよ』


「そうだね」


 ユニィが背に乗ると同時。

 サギリが勢いよく走り出す。


『おい。少しぐらい待ったらどうなんだ』


 俺の抗議は、サギリの耳には届かず置き去りにされた。

 ――ったく。


「すまん。待たせたな」


『いや。あいつらが慌てているだけだ――まぁ仕方ないがな』


 リーフェを探して海へ山へ世界の裏側へ。

 随分長い旅だったが、ようやくあいつとも合流できそうだな。


次話から第8エピソードです。

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