271.尽きせぬ疑問
今回も短めです。
「なるほど。突然暴れ出した上に、落ち着くまで入れておいた牢の中からも逃げ出した――と」
その場で話すには長くなる――という事で集会場の様な場所に通されたんだが――
――本当に何やってんだあいつは。
手紙に書かれていたのは魔人族に捕まったという事だけだったんだが、そういう事なら先程の歓迎ぶりにも、今入口を固めている魔人族達にも頷ける。
同じ脚竜族が来たという事で、相当に警戒しているのだろう。
相棒の機転で、リーフェ達を捕らえるために追っているという事にしたんだが、どうやら正解だったようだ。
『あのバカ』という声に横目で窺うと、サギリがわずかに尻尾を振っている。
その横では、ユニィが今にも謝りだしそうな顔をしているが――お前達。
頼むから、これ以上問題は起こさないでくれ。
「それで、どちらに向かって逃げたか分かりますか?」
そんな俺の懸念を他所に、相棒は質問を続けている。
――まぁ、それを聞かなきゃ変だしな。
そう思いながらも、やることの無い俺は周囲を見回す。
積石と粘土でできた壁に天井。
内装は質素で余分な飾りは無く。
生活用具を保管しているのか、部屋の隅には陶器の器や壺が並んでいて――ん?
「そうですか。ありがとうございました」
相棒の言葉に意識を戻す。
とりあえず、リーフェ達に関する話は終わったようだ。
『おい』と相棒に一声掛けると、相棒が頷いた。
「ところで――我々を表の客人と呼んでいましたが、あなた方はここが世界の裏側だという事実を知っているのですね」
正直に言うと。
リーフェがこの場に居ないのなら、彼ら魔人族から話を聞く必要はない。
だが――リーフェからの手紙でこの場所に魔人族の集落があると分かってから、俺達の「研究者」としての血は騒ぎっぱなしなのだ。
魔人族との会話も、ここからが本題と言っても良いだろう。
何と言っても――
魔人族とは何なのか。
世界の裏側とは何なのか。
空に浮かぶあの淡く光るものは何なのか。
尽きせぬ疑問。
この地に暮らす彼らの持つ情報が、それらを解き明かす一助になるかもしれないのだから。




