表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
280/308

268.脱走

『元はと言えば、おじさんが悪いんでしょ!』

『は? 何の警戒もせず呆けてるてめぇに言われたくはない!』

『何度も同じこと言わせないでよ!』

『それはこっちのセリフだ!』


 狭い部屋の中に反響する、僕達の怒号。

 怒号に怒号が重なり、まるで耳の中で怒鳴られたかのような音量だ。


 ――と。

 前触れも無く、凄い勢いで扉が開いた。

 その動きに、瞬間的に目をやる。

 開いた扉の向こうには、槍を構えた二人の若い魔人が見えて――


『シールドっ!』


 待ち構えていた僕は、直径1cm程に細分化した『ポケット』で、槍の穂先を空間に固定した。

 同時に――


「かうてり!」

「たぶりすもら」

「にぬ? だえうえかたかろ」


 こちらの動きに気づき、扉を閉めようとした魔人が困惑の声――と思しき声を上げる。


 ――でもね。

 僕が止めたのは槍や扉だけじゃないんだ。


「いすぐえがきにう!」

「あろま!」


 同時に足も。そして、足に気を取られた隙に上半身も。

 100を超える小さな『ポケット』が――魔人達の手足の関節を囲み、拘束している。


『どいててねっ』


 そのまま――『ポケット』の座標を操作し、二人の魔人を壁際に寄せた。


『おじさん!』

『おう!』


 僕の合図におじさんが応えて前に出る。


「待たれよ。客じ。おち――――」


 ――邪魔。

 若い魔人達の後ろに居た老人も、『ポケット』で拘束して脇に寄せる。

 何か言い掛けていたけど、聞いている暇はない。

 僕達は、その脇を抜けて駆けだした。



 部屋から逃げ出した僕達は、建物内の入り組んだ通路を抜けていく。


『そこを左! その次は右! 次は――真ん中!』


 先行するおじさんに、最短ルートを伝える。

 あの部屋にいる間に、『スキャニング』で建物の内部構造は把握済だ。

 随分と地下深くに閉じ込められていたみたいだけど、このままいけば、間もなく外に出られそうだ。


『そこの角を曲がった先が出口だよ――って、待って!』


『いや、このまま行くぞ!』


 『スキャニング』の反応を見て止めようとした僕の声に、おじさんの声が被る。

 本当に大丈夫かを問い直す時間もなく、角を曲がり、その先を視覚でも捉え――その瞬間、視界が闇に包まれた。


 ――『暗幕』? だけど――今度は効かないよ。


 そのままおじさんに向けて『サーチ』の術を使う。

 紫色の光は、10cmも伸びずに暗幕に飲まれた――けど。今はその方向が分かれば十分だ。


 魔人達を躱すのはおじさんに任せ、僕はひたすら後を付いていくことに専念する。

 おじさんが左にいけば左。右にいけば右。

 左右に動きながら走るおじさんの動きを追うように、僕も左右に動きながら走る。


 時間にすれば一瞬の、最後の通路。

 暗闇の中、永遠にも思えるその通路を抜け――僕達は、魔人達から逃げ出すことに成功した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ