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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
273/308

261.全部抜く

 青年達に案内された沼は。

 周囲のそれと()比べると、明らかに異質と分かるものであった。


 まずその形だが、直径50m程の大きさのほぼ真円に近い形をしている。

 星が降った跡など自然にできなくもない形だが――この場合、人為的なものを疑った方が素直だろう。

 一方の水深については、周囲の沼地とさほど変わりは無い。

 水際から覗ける範囲では底も見えており、深い場所でも1mにも満たないのではと思われる。


 ――だが。

 その水質は、沼という言葉から想像していたような泥の浮遊、堆積したものではなく、意外にも澄んだ水を湛えた場所だった。

 そして、その事実が示すのは――


「――当たりだな」


『ああ』


 俺と同じく瞳を青に染めた相棒の言葉に、一言だけ返す。

 泥の堆積が無いということ――それはつまり、堆積する物が存在しないか、堆積することなく流れされているということを意味している。

 そして――当然だが、この湿原には堆積し得る物は数多く存在する。

 枯れた草木、魚等の生物の死骸――およそ生物が存在する限り、それらが無くなることはない。


 ――であれば、自明。

 それらは全て流されているのだ。

 湧き出る水に。魔魚と呼ばれる魚を運ぶ湧水に。


『ねぇ、マーロウ。本当に今度こそ大丈夫なんでしょうね?』


 サギリが疑いの目を向けてくるが、そんなことを俺に言われても困る。

 可能性は語れても、それは絶対ではない。

 ――何より。

 俺達はそれを確認するために、この場所に来たんだからな。


『まぁ黙って見てろよ』


 それだけ返して、ユニィの姿を探す。

 この沼みたいに限られた場所の水抜きなら、リーフェ(あいつ)の術が有用だ。


 そんなことを考えながら周囲を見渡して――妙なものを見つけた。

 いや――あの光は。


『お前、それまだやってたのか』


 その紫色の光を辿ると、案の定ユニィが居た。

 カリ何とかという港町でトリサンに頼まれていた、この場所を知らせる為の『サーチ』の術だ。

 だが――


『あいつが合流するとか、もう無理だろ』


「そうかもしれませんけど――約束なので」


 ――真面目なことは知っていたが、ここまでとは思わなかった。


 普通に考えれば。

 このネザレ湿原は、夏でも歩いて3日は掛かるほどの深い山の中。

 陸を歩くことが困難なトリサンが俺達に追い付けるはずがない。

 無論、海からこの場所までは川で繋がっている。

 繋がってはいるが、当然深い山中における川の流れは速く、簡単に遡上できるはずもないのだ。


 俺は気持ち大きめに首を横に振った。


『そんな事より、『ポケット』の術を頼む。沼の水を全て抜きたいんだ』




「――『ポケット』!」


『キーワード』を口にしたユニィの瞳が、黒紫に染まる。

 そして10秒と経たず――沼の中央に渦巻く窪みが現れた。


 目に見えて下がる水位と、露わになる沼の底。

 ――やがて。

 沼の中央、俺達の前に姿を見せたのは――


 僅かに残った水に群がる、大量の魚達だった。




 ――――まぁ、そうなるよな。

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