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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
272/308

260.冬の湿原

 視界が開ける。

 広がるのは一面の白。ただ白く広がる雪原。

 ――いや。

 白の中で時折光り、その存在を主張するのは水面だろうか。


『ようやく――ね』


 涼しい顔をしたサギリが隣に立ち、何事もなかったかのように呟いた。

 その瞳から、黄色の気配は既に消えている。


「っしゃ! やっと着いたぜ!!」

「ごめん、もう無理――」


 聞こえた声に振り向くと――シュ何とかの町で同行することになった冒険者達。

 その内の少年二人が雪上に座り込んでいた。



 実のところ。

 町からの出発を前にした俺達には、ある一つの問題が浮上していた。

 それは――町からネザレ湿原まで掛かる日数だ。

 冒険者達の話によると、冬だと徒歩で5日は掛かるという。


 俺達なら、悪路だろうと雪道だろうと半日も掛からない距離なんだが――人族であればそんなものなのだろう。普通は冬の間は立ち入らない場所らしいからな。


 そう納得しかけた俺達だったが――ただ一竜(ひとり)納得していない者がいた。

 それが――サギリだ。

 5日を少しでも短くするために――『加速』の術をこれでもかと冒険者の三人に使ったのだ。

 そう、これでもかと言わんばかりに。


 結果。

 この場に辿り着いたのは、街を出て3日目の夕刻。

 大幅に日程を短縮することに成功していた。


 ――まぁ、この二人はしばらく動けそうにないがな。


「探しているのは、魔魚が最も多い場所――でしたね」


「ああ、その通りだ」

「お願いします」


 一方。

 このマルクとかいう青年は一人、平然とした顔で相棒達と打ち合わせを行っている。

 全てにおいて、駆け出しの二人とは鍛え方が違うのだろう。

 道中話した事情を元に、既に向かう先の候補も決まっていたようだ。


「バーツ。アール。いつまでそうしているんですか?」


 続くその言葉に。

 しばらくは立ち上がることなどできないと思われた、二人の少年が立ち上がった。


「それでは、案内いたします」


 青年が先導し、少年二人が周囲を警戒しながら後に続く。

 道中でもそうだったが、どんなに疲れていても青年の言葉には従うようだ。

 ――ただ。

 アールと呼ばれた黒髪の少年は、しばらくの間ぶつぶつと文句を言っていたが。

 他の二人が何も言わないところを見ると、いつもの事なのだろう。



「何だか――不思議な感じ」


『あら。どうかしたのかしら?』


「――ううん。大したことじゃないの」


 ユニィの呟きをサギリが拾う。そんな他愛もない会話だ。

 走っている時なら聞こえないその会話も。

 今は人族の歩く速度に合わせているため、こちらにまでその内容が聞こえてくる。

 まぁ、取り立てて気にするような話でもなさそうだが――


「ただ――ね。リーフェと一緒に来て、確かに見覚えのある景色なんだけど――」


『だけど?』


「うん。何だか違和感があるの。何かが違うような――何か忘れているような――」


『そう――もしかしてだけど、季節の違いじゃないかしら? 確か、リーフェが魚を大量に持って帰ったあの日って夏だったわよね。だから――見える景色もその色合いも、違って見えるのかもしれないわ』


「そうかも――うん。そうだよね」


 ――多少迷いは晴れたようだな。


 そのまま5分程進み。

 一つの沼地の前で、青年達が立ち止まる。


「この沼です。何度駆除しても、すぐに魔魚が増えてしまうのは」


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