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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
268/308

256.別れ

「この度はどうも、お世話になりました」

「本当にありがとうございました」


「いえ、旦那。報酬は別に頂いておりますんで。それに嬢ちゃんも――我々も普通では得られないことを、経験させて頂いたんでね。礼を言うのはこちらですぜ」


 相棒とユニィが頭を下げている光景を、船から離れて眺める。

 この船が停泊可能な規模の港の中で、目的の地に最も近い港町。

 王国北西のカリ何とかという港町に俺達は降りていた。

 ここから目的地までは陸路を進むことになる。

 半月以上を共に過ごした船員達とも、ここでお別れだ。


『貴方は挨拶しなくて良いのかしら? お世話になったんでしょ?』


 ――お前がそれを言うのか?

 隣から掛かった声に、無言の視線だけを返す。


『あら? 私はちゃんと頭を下げといたわよ? お世話になった糧食担当の人に』

『迷惑をかけたの間違いじゃないのか?』


 思わず口が出る。

 食事の度に毎度『足りない』だのなんだの、伝わりもしないのに大騒ぎをしていた()()だろう。

 熊型獣人の大柄なおっさんだったが――あまりもの困惑に、その体が小さく見えるほどだったからな。


『そんなことないわよ。いつもと違って嬉しそうだったもの――って、私の事はどうでも良いでしょ? 貴方はどうなのよ』


 ――どうやら、誤魔化せなかったようだ。

 思わず舌を打つ。


『俺が言っても伝わんねーからな。無駄なことはしねー主義だって知ってんだろ?』


 ユニィが特別真面目なだけで、相棒が俺達を代表して対応してるんだからそれで良いんだよ。

 俺はこの話は終わりとばかりに顔を背けて――こちらを見ている視線と目が合った。


『――だから。何とかしなさいよ。()()


 ――ああ。そういうことか。

 俺はもう一度説明することにした。

 次の目的地をネザレ湿原にしたこと。その理由について。




『――んなもん、たかが同じ魚が居ただけだろ? 不確実な話じゃねぇか。北から周る方が確実に行けるだろ』


『お前はともかく、俺達はどうやってそこまで行くんだよ。落ちてくのが分かってんのに船なんか使えねーつったろ』


 本当に、余計なところに突っ込んできやがる。

 確かに、結論ありきの理由だが――こんな時まで面倒くせー奴だ。


『ともかく――ここから俺達は内陸を進むんだよ。ここまで世話になったが、ここでお別れだ』


『てめぇ』とか『くそっ』とか聞こえてくるが、すべて無視する。

 もう決めたことだ。

 ここまで来て覆すなど、あり得る訳がない。


「あ。――トリムさんも、ここまでありがとうございました」


 そうしている内にこちらに気付いたのだろう。

 ユニィが近づいてきて、トリサンに手を差し出す。


「今回上手く行かなかったのは残念ですけど――またいつか御一緒させて下さい」


 ――その瞬間。俺は見た。

 そう言ったユニィの顔を見ていたトリサンが――ニヤリと顔を歪めたのを。


『――いや。それなんだけどよ――後から俺も追いつくからな。また例の術。頼むわ』





 ――で。何を言い出したんだ? こいつは。

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