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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
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254.道行く先は

 穏やかな日の光と緩やかな風。

 海面のうねりも小さく――あれほど警戒した西回風の影響も、どこにも見当たらない。

 往路とは打って変わって、帰路の船旅は静かなものだった。


「――ぃ丈夫ですか? マーロウさん」


 そんな中で掛けられたユニィの声に、少しだけ意識を浮上させる。


『――――ああ。悪い、考え事をしていた』


 これから。

 どうすべきか考えて考えて。

 ――未だ答えが出ない。


「あの――私達に協力して貰えるのは嬉しいんですけど、一竜(ひとり)でそこまで――」

『んな事、気にすんなよ。こいつは俺がやりたいからやってることだ』


「でも――」


『そいつは()()()()()なのよ、昔から。放っときましょ?』


「――――」


 まだ何かを言っている気がするが、意識を割くほどではないと判断して思考の深みに戻る。


 答えが出ないとはいえ。

 俺達が今後取れる方策、その選択肢は多い訳でも――そして無い訳でもない。

 今考えられる方策は四つ。

 ――だが。それぞれが一長一短で決め手に欠ける。何度考えても結論が出ない。


 一つ目。

 海底遺跡に再度挑戦する。

 これは単純な話。水流操作に長けた高度な水術の使い手を連れてくるというものだ。

 長所として、この方策であれば遺跡の位置は把握済みだ。さらには遺跡が『力』の濃い場所と繋がっていることまで確定している。その意味でのリスクは低いだろう。

 一方で、それほどの高度な水術の使い手がそんなに簡単に見つかるのか。そしてそもそも、水術で対応可能なのかという話がリスクとして残る。無駄足となる可能性も少なくないだろう。


 二つ目。

 当初も考えていた、大陸最北端。黒の遺跡へと向かう。

 これは遺跡の機能回復を期待するものだ。遺跡の機能さえ回復していれば、ユニィが近づくことで遺跡は再度その門を開くだろう。

 長所は当然、リーフェが消えた時の状況を再現し、同じ場所へと向かうことができるという点だ。

 だが――それほど都合良く遺跡の機能が回復しているなど、あり得るだろうか? これも無駄足となるリスクは高いとみている。


 三つ目。

 船でひたすら北へと向かう。

 遺跡には頼らない。直接世界(円環)の裏側へと向かうものだ。

 長所は確実に世界の裏側に到達可能だということ。

 短所は――生きて到達できるのかが分からないこと。そして船を持ち帰ることが困難という点だ。南北に向かうと、世界の端で内側に落ちるという噂。これが噂に過ぎないとしても、世界の裏側に水が流れ込んでいることは間違いのない事実なのだ。だとすると――その流れに逆らって船を持ち帰ることは不可能に近いだろう。さすがに船を弁償することは考えたくない。


 四つ目。

 新たに浮かんだ可能性。

 海底遺跡の門の先と同じ過剰な『力』を持つ魚。その魚が獲れるネザレ湿原へと向かう。

 そこに何があるのかは分からないが――海底遺跡が繋がる先と、同種の場所へと繋がっている可能性が高い。

 長所は、他と比べると西都から比較的近い位置の為、短期間で確認が可能な点だ。

 一方の短所は――不確定要素が多すぎる点だ。


 考える。考える。何度も繰り返し考える。

 だが――結論は出ない。


 知らず溜まっていた、ため息を吐く。


 こういう時は――そうだな。

 先程のユニィの言葉通り。

 一竜で考えず、相棒に相談してみるか。




 相棒は一人。船尾で海を眺めていた。

 何を考えているのか。

 海と同じく静かな感情からは、思考までは読み取れない。


『なあ、相棒。今後の方針について、お前の意見が聞きたい』


 感情の動きを返答とみなして、先を続ける。



 四つの候補とそれぞれの長所と短所。

 全てを語り終えた俺に――相棒がにやりとした笑みを返した。



「それで。一体お前は()()()()()んだ?」



 ――ああ、そうか。

 俺は――そんなことも見えなくなっていたのか。


 答えを返す代わりに、俺は口角を上げてみせた。


本エピソードは次回までです。

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