25.検証の結果は
ユニィ視点は今回までです。
「テレポート!」
『次元刃! 次元爪! 次元牙!』
「クイックタイム!」
『時空断裂!』
「えーと次は――キッチンタイマー? 何これ?」
『ユニィ! ダメだよそんな中途半端な気持ちじゃ! スキルの発動には強い想いが必要なんだから!』
リーフェの激しい檄が飛ぶ。だけど――
「ねぇ、リーフェ。あとどのくらいあるの」
『うーん。もう少しかな? マーロウ! 残りはどれだけ?』
向こうの木陰で本――書庫から借りてきた珍しい本らしい――を読んでいたマーロウさんが返事をする。
ちなみに、サギリさんは時間が掛かりそうだということで、『終わったら呼んでよね!』と言って、検証が始まって早々に走りに行ってしまった。
『ん? ――ああ。あと12、3ってとこだな』
――ああ。ようやく終わりが見えてきた!
「キッチンタイマー!」
私達は、当時の長老の記した本に基づいた『キーワード』候補を検証している。
検証としては、単純に作ったリストの上から順番に、発動状態をイメージしながら『キーワード』候補を念じたり、叫んでいるだけなんだけど、これが中々難しかった。
元々、伝聞による情報のため記述が曖昧な上に、技や術の名称も殆どわからない。それに、技や術の名称がわかるものについても、その名称が『キーワード』とは限らない。そのため、100以上の『キーワード』候補をリーフェと一緒にそれぞれ試すことになった。
でも、結局――
『――全滅かぁ』
リーフェが呟く。心なしか、少し元気がない。
――うん。やっぱりそう甘くはないよね。
途中何個かいけそうな気がしたんだけど――『キーワード』を念じても叫んでも何の反応もない。
ただの気のせいなのか、『キーワード』が間違っているのか、それとも何かが不足しているのか――絶対いけると思ったんだけどな『キッチンタイマー』。
そんな私達にマーロウさんが声を掛けてくる。
『あー。まぁ気落ちすんなよ。もしかしたら、進化を重ねないと使えないのかもしれねぇし』
「――ありがとうございます。そうですよね。今は使えなくてもいつかは――ですよね」
私は決意を新たにする。――待っててね。『キッチンタイマー』!
――あ。それと、サギリさんは私達が『キーワード』候補の検証を終わった5分後に戻ってきた。
その時リーフェに対して、『さすが』とか『うっかり』とか言ってるみたいだったけど――あの二竜、リーフェが『宿敵だ』とか言ってる割には、すっごく仲良さそうだよね。
――――――
『それじゃあ次は、今使える術の検証だな』
『リーフェ。あなた今まで一竜でスキル検証してたんでしょ? その結果を共有してよ』
『――うん。それじゃあ今まで分かっていることを僕から説明するよ』
リーフェがこれまで『ポケット』について、スキル検証した結果をみんなと共有する。
収納という基本効果。発動範囲に収納できるものの大きさ。個数。そして収納できないもの。
あとは、収納したものは状態を維持して時間経過しないこと。そして、私とリーフェで『ポケット』の中身は共有されること。
これらの結果について、四にんで再検証する。
入れるものを変えながら、私とリーフェで『ポケット』を使う。
さっきと同じ単純作業に思えるけど、私はこっちの検証の方が好きかな?
だって、実際にスキルが発動する方が良いもの。
そうやって検証した結果、新たに分かった特性が一つあった。
それは、収納したものは『収納した時の状態を全て維持できる』ということ。つまり、熱いとか冷たいとかだけじゃなくて、スピードとかも維持できちゃうみたい。
落ちてくる石を収納した後に取り出したら、そのままのスピードで地面に落ちてった。
――何だか怪我しそうなので、ものを出すときは気を付けよっと。
そしてもう一つ、『ポケット』の使い方についてみんなで知恵を出し合った結果――この術の特性を生かして、熱いものや冷たいもの、傷みやすいものの「保存」とか、私とリーフェの間での小さなものの「転送」に使うのが良いんじゃないかという話になった。
特に「転送」については、手紙を転送すれば情報のやり取りもできるし、もしかして凄く使えるかも?
お手伝いの予定とか、特訓の予定とか、遊ぶ予定とか。
急な変更でも対応できるようになるよね!




