246.道標
今回短めです。
港に出入りする船が。
古くて――でも新しいウィスディンの街並みが。
――視界から消えていく。
振り返って前を向くと、そこには暗い色を湛えた海だけが広がって――
――本当に。
この先の遺跡に、リーフェへとつながる手掛かりがあるのかな。
そんな思いがどんどん浮かんできて。
『本当。迷惑な奴よね』
「そんな事ないよ。パートナなんだし、困った時には助け合わなきゃ。――でも。ありがとう」
サギリに声を掛けられた。
――気持ちが伝わっちゃったみたい。
「そうだ。私もそろそろ――やることやらないとね!」
声を少し張り気味にして。
ポーチから折りたたんだ地図を出す。
出発前に写してきた、西海の海底遺跡――その場所が記された地図だ。
本のタイトルは少し怪しかったけど――地図を含めたその内容は、驚くほど正確なものらしい。
――って、そんなことはどうでも良いか。
頭を振り、雑念を追い払って集中する。
地図に描かれた情報を頭の中で再構築する。
そして、それと合わせるように。
太陽の位置、時刻、わずかに見える陸地と島々の配置。
意識の有無に関わらず、感じ取れる彼我の位置情報を束ねるようにして――念じる。
――『ナビゲート』っ!
術の起動。わずかに感じる冷たさ。
――同時に。
手元の地図に変化が現れた。
紙面上に浮かび上がる、二つの光点。
一つは点灯したまま。そして、もう一つは明滅する光点。
現在地と、目的地と。
まだ遠い2点間の距離が、地図の上の光点にも表れている。
「しばらくこのまま――まっすぐ西方向って伝えて」
それだけを近くの船員に言伝て。
また――広がる海を眺めた。
――あれ? 何だか――
その視線の先。
さっきまでは暗い色しか感じられなかったはずなのに、今は――
まるで光に照らされている様な。
そんな気がした。




