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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
257/308

245.揺れる波紋

第4エピソードはここまでです。


『お前ら騒ぐんじゃねーぞ――『ヴォイド(空隙)』っ!』


「うぉーっ!?」「嘘だろ?」「幻覚。幻覚だろこれ――誰か俺を殴ってくれぇ」「あのっ。みなさん――」「誰か潜って確かめようぜ!」

「まじかこれ!」『このうるさい奴ら叩きのめして良いかしら』「俺様の船が……」「痛ぇ! 何しやがんだてめぇ!」

『なんで騒いでんだよお前ら! 騒ぐなっつっただろ!』



 結局。

 俺達はこのトリ何とかという海竜族。

 こいつの提案通り、西回風の()()()くる海域に関しては、海中を潜って抜けることにした。

 理由は単純。この方法が一番リスクが低いからだ。

 海面上は危険な西回風も、100mも潜ってしまえばさしたる影響はない。

 当該海域の水深は200mを優に超えている。念のため海底付近を潜航すれば、安全に抜けられるというわけだ。


 ――しかし。

 俺は、水面から伸びていたトリ何とかの頭を尻尾で巻いて引き寄せた。


『お前が一番うるせぇんだよ。てか、俺達の言葉は普通の人族には聞こえねぇって言っただろ?』


 こいつに実演させたのは失敗だったかもな。

 いや。相棒の提案で船員達に酒を振舞ったのがまずかったか?

 船乗りなんてゴロツキに毛が生えた様なもの。安酒を浴びるほど飲ませとけば何でも言う事を聞く――って話だったんだが。


「おいコラ! てめぇら押すんじゃねぇ!」

「せんぱぁーい。頼んまーす」「オイラあんたの事――忘れませんぜ」「うぉーっ!」

「イケる! イケるぞ!」


『おい、どうすんだコレ?』


 俺は隣の相棒に視線を送った。

 腕組みをしているその姿からは、愛おしむような感情が流れてくる。


 ――と思うと。大きく息を吐いた。


「やらかしたな。これは」


『「やらかしたな」じゃねぇだろ』


「――ああ。まぁ見てろ。こういう時にはな――」


 そう言い残し、両腕を広げて騒動の中心へと歩み――手近な船員を抱きかかえる。

 その背中は――心なしか広く。大きく。

 伊達に俺よりも年齢を重ねているわけではない。

 徐々に静まる騒動――これこそが年齢のなせる業なのだろう。


「お前も飛び込むぞ!」

「「「うぉおぉー!」」」


 ――――そういや。相棒(あいつ)も飲んでたな。


 揺れる波紋に溜息を吐いた。



 ――――――


『どこまで行っても海。海。たっまには山の幸が。食べたいよー』


 気の抜ける歌――いや。これを歌と呼んで良いのかは甚だ疑問だが――その歌声が嫌でも耳に響く。

 思わず顔をしかめてしまったのは、その騒がしさが故――だけではない。

 その歌詞に、思わず同意してしまいそうになったから。それも大きな理由の一つだ。


 この一週間。

 調達できた食料は全て魚。それも、全く同じ種の魚ばかりだった。

 初めは美味に感じていたその味にもすっかり慣れてしまい、もはや飽きてしまったと言っても良い状態だ。


 そして――流石にここまでくると、あまり頭の回転が早くない俺にも違和感が感じ取れる。


 ――そう。

 この魚。一体()()()()()()()()()()んだ?


 この魚の他は、小魚も貝類も藻類も。

 魚の餌(俺達の食料)になりそうなものは一切見つかっていない。

 大量に居るという魔物を警戒して、身動きの取り辛い水中の探索は控えているが――もしかしたら、より念入りに調べた方が良いのかもしれない。


 そんな事を考えていて――ふと。


 足裏に硬い物が触れた気がして、下を見る。

 そこには――


『何だこれは? いやこれは。陶器の――欠片だと?』


 思わず口に出て――すぐに口を閉じる。

 この欠片の角は未だに鋭利であり、少なくとも海から流れてきたものではないだろう。


 ――とすると。


 どうやら、この辺りは念入りに探索する必要がありそうだ。


次回から第5エピソードです。

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