243.結論
『――という訳だ』
結論を述べた後、皆の顔を見る。
顎に手を当て、何かを考えている相棒。
目を細めるサギリ。
目を大きく開くユニィ。
「つまり――天候を操る嵐術、または全ての『力』を減衰する死術。そのどちらかを使うことができるひとや物を探せば良いんですね」
『そういうことだ。できれば両方揃えたいところだな』
頷きを返す。
結局のところ、可能性が低くとも其々の使い手を探すことに落ち着いた。非効率的なのかもしれないが、見付からなかったとしても実際のリスクは低い。
俺の言葉に、承知したと言わんばかりにユニィが頷いて――その姿を見て俺は思い出した。
左前脚を差し出す。
『ああ、そういえば。お前達も金を出してくれ。あいつの分も入れて金貨6枚な』
――――ん?
途端。
様子のおかしくなったユニィに、俺の動きも止まる。
――おいおいおいおい。
まさか――一年以上働いて、それっぽっちも貯まってないのか?
リーフェの奴はよく、小遣いをいっぱい貰えたとか言って喜んでたんだが――そういうことだったのか?
――ああ。心なしか今日は冷え込むな。
俺は窓の外に視線を移した。
そういえば、もう少しで冬がやってくるんだったか。
『ねえ』
いつも通りに。
そんな空気を無視するかのように声が響いた。
『嵐術って嵐を呼ぶあれよね? 緑色の』
――――へぇ。
驚いた。
あれというのが何のことかはさっぱり分からないが――嵐術を起動する際の瞳は、確かに緑色だ。
俺は視線をサギリに戻すと、軽く頷いてみせる。
『――ほらユニィ。この前も会ったあのおじいさん。確かあの時、雨雲を呼ぶ術を使ってたわよね』
「そういえば――」
どうやら当てがあるようだ。
ならばとばかりに俺は振り返る。
『なあ相棒。お前はあの鑑定屋のおっさんのとこに行って、宝物庫にあった「真竜族の鱗」を借りてきてくれないか?』
「ああ――あれだな。わかった。交渉してみよう」
――よし。
これで何とか風の対処には目処は立ちそうだ。
後は――船長を初めとする、船員達の説得だな。
難しい話ではあるが、結局金はないんだ。実際に術を使って見せて、説得するしかないだろう。
再びユニィ達へと顔を向けた。
『そういうことだからな。お前達はそのじいさんとやらを連れてきてくれ』
『嫌よ』
――――はぁ?
ノータイムで返ってきた訳の分からない返答に、思わず口許が緩みかけたが――ぎゅっと締め直し、問う。
『何故だ?』
『連れてくるということは――一旦、都市の外に出るんでしょう?』
そのじいさんがどこに居るのかは知らないが、この都市の住人じゃないということだろう。
それを踏まえて、俺は頷いた。
『またあの行列に並べるわけないでしょ! 私はもう嫌なんだから。――――そうだわ! あいつよ、あいつ。あいつなら門を通る必要もないじゃない!』
「サギリ!」
ユニィの制止も聞かず、飛び出していくサギリ。
――まあ、サギリが暴走するのはいつものことだ。
普段なら放っておいても問題は無いんだが――今は時間が勿体ない。
俺は、サギリを追って外に出た。




