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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
253/308

241.その理由

『は? 2週間以上? 何言ってるのよ』


 不必要に大きいサギリの声が、耳の中で反響している。


 俺達は、港から滞在中の鑑定屋の屋敷に戻り、今後の方針について話し合ってたんだが――これだ。

 ――他竜(ひと)の耳の近くでそんなデカい声出すんじゃねえよ。

 反射的に顔を睨みつけた――が、まぁ睨んだところで気付きもしないだろう。


「そんな事を私に言われても困るのだが」


 詰め寄られている相棒に僅かにだけ同情する。

 あれほど激しく詰め寄られていたら、鬱陶しくなるだろう。

 俺なら誰かに押し付けて、さっさと逃げるがな。


 そう思いながら溜息交じりに眺めていたんだが――アホくせ。

 少しばかり嬉しそうな相棒の顔を見て、僅かでも同情したことを後悔した。

 そして同時に俺も――逃げ遅れていたことを悟る。


『マーロウ。あんたも暗い顔してないで少しは考えなさいよ。ほら。所詮風なんだから、何か方法があるでしょ? 空術で対抗するとか、あのノロマを竜柱(ひとばしら)にしてその隙に抜けるとか』


 ――必死なのはわかるんだが、ちょっと無茶苦茶じゃねぇか?

 大体、竜柱ってなんだよ竜柱って。

 真竜族相手とかならともかく、自然現象だぞ? そんなもの無駄に決まってるだろ。

 百歩譲って神様相手に祈るにしろ、(ひと)を供えちゃ駄目だろ。竜を。



 ――()()



 ああ。

 ()()()言うじゃねぇか。


 無茶苦茶に思える話だからこそ。

 何とかできねぇか――それを考えるのは面白い。


『そうだな。少しは考えてみるか』


 そう口にしながらも、既に。

 俺の意識は――この場には存在しなかった。



 ――――――


 ――整理して考えてみる。


 まずは、今直面している問題。

 その定義からだ。

 自明なようでいて、これを読み間違えると結論さえも変わってしまう。

 ここを疎かにするつもりはない。


 では今の問題。それは何か。

 それは「船が2週間出航できないこと」。

 ――さらに言えば「その2週間の遅れを許容できない」ことだ。



 そして次に、それらの理由を原因を考え整理する。

 自明なようにも思えるが、ここも見落としを避けるために一から整理する。


 まずは「船が2週間出航できないこと」。

 その理由は何か。


 当然。

 直接の原因は「西回風が西の海に落ちてくる」ことだ。


 では――なぜそれが出航できないことにつながるのか?

 一つはもちろん「激しい下降気流が発生する」。

 そして「下降気流の風圧がデカすぎる」。

 さらには「風圧に船が耐えられない」。

 あとは――「船員がビビっている」。

 この辺りがその要因だろう。



 次。もう一つの「その2週間の遅れを許容できない」。

 そもそもこの問題をクリアできれば、何もせずとも待っているだけで解決する話。

 では、許容できない。その理由は何か。


 リーフェの奴が危機に陥っているから?

 ――いや違う。

 あいつは至ってのんびりしたものだ。昨日も、魚が旨いとか呑気な事を報告してきやがった。


 それでは、路銀が底を突く?

 ――それも無い。

 今俺達は鑑定屋の屋敷に滞在している。宿泊費代わりに少し『インスペクト』を使う必要はあるが、こと費用面に関してはどうこういう話は無いだろう。


 とするとやはり――「俺達が待っていられない」。

 これしかないだろう。

 リーフェに早く会いたいユニィ。

 待つ事が耐えられないサギリ。

 そして俺も――



 ――そうだな。こんな面白い事、いつまでも我慢できるわけがねぇ。


 こっちの問題を解決する方法は、どうやら一つしかなさそうだ。

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