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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
252/308

240.西回風

『ちっ――そういや今は西回風(せいかいふう)が暴れる季節か』


 船長の話に。

 思わず眉間に皺が寄る。


「そうだな。こればかりはどうしようもない。諦めて待機するしかないな」


「あの――」


 相棒の言葉に、ユニィが反応する。


「さっきから、西回風――ですか? 何だかその風を気にしてるみたいですけど――船が出せなくなるほどなのでしょうか?」


「ん? ――ああそうか。君は王国でも内陸部の出身だったね。それなら知らないのも無理はない。西回風というのはだね、この時期に――」


 とりあえず、出航に向けた打ち合わせの為にここに来たんだが――しばらく出航は無理だな。

 ああ。

 せっかく、あのおっさんから船員付きの船を借りれることになったっつーのになぁ。ついてねぇ。

 暇になった俺は、改めて辺りを見回す。


 聳え立つかのような大型の帆船。次から次へと出入りを重ねる中型の帆船。

 岸壁は船に覆われ、波音に混じり船同士の擦れる音が聞こえてくる。

 当然だが、途中の漁村で見たような小型船など見当たらない。


『風如きにビビるなんて、(おか)の上の連中はヒョロっちいな』


 水の中から面倒な奴が顔を出してきた。

 そのまま大人しく沈んでてくれても良いんだが。


『――おい。港の外に隠れてろって言っただろ? 見慣れねぇ奴がこんな所に居たら騒ぎになんだろうが』

『ノロマと意見が合うのは気に食わないけど、風については同感ね』


 睨みつける俺の後ろから、声が被さる。

 ――くそっ。面倒(めんど)くせぇ奴が増えたな。

 体を回しながら、思わず舌を打つ。


『お前らもあの真面目ユニィみたいに、俺の相棒の話をちゃんと聞いとけよ。――おい、そんな睨むんじゃねぇよ。――――くそっ。分かった、分かったよ。簡単に教えてやるよ』


 放っておいたら、いつまでも睨まれ続けるだろう。

 ああ。

 こいつらやっぱり――面倒(めんど)くせぇ。




『――お前ら。西回風は知ってるよな?』


 ――二竜(ふたり)に聞こえるよう、舌を打つ。


『この世界(円環)に沿って、常に西から東へと吹く風の事だ』


 返事は期待するだけ無駄だ。

 分からなくても構いはしない。


『そいつは常に、この世界の空高くを吹き続けている。お前らは何故とか気にするな。そういうものだ。そして普通は高い所に居るこの西回風は、年に数回。地表へと()()()くるんだ。お前達も爆弾風とかぐらいなら聞いた事があるだろ? (ひと)が吹っ飛んだとか、家がバラバラになったとか、村が吹っ飛んで大穴が開いたとか。アレだよアレ』


 そこまでを一息で語り。

 息を整えて。


()()()が――この時期はこの辺りから西の海上に()()()んだよ』


 これで流石に――こいつらでも分かるだろう。


 今回のように海上に落ちた場合は、海面近くの水がそこに居る生物も含めて吹き飛んでしまう。

 その一部は空に舞い上がって、遥か東に降るらしいが――想像したくもないな。


『はいはい。分かったから早く行きましょうよ』

『要は潜っときゃあ良いんだろ。潜っときゃ』



 ――こいつらいっぺん沈めとくか。


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