238.宝物庫
今回諸事情により少し短めです。
「――素晴らしい!」
決して狭くはない――いやむしろ広すぎる宝物庫に、感嘆の声が響く。
「それでは、次はこれを視てくれないか?」
「ええ、もちろん。――それにしても。このような貴重な遺物を視させて頂き、本当にありがとうございます」
「『慧眼』の持ち主が何をいまさら。私がこれらを蒐集しているのは、新たな知識を蓄える為。このまま宝物庫に置いておいても、無用の長物。所詮、私のスキルだけでは限られた情報しか得ることができないのだよ。分かったかな? 分かったのであれば、さあ――さあ!」
不自然に手足の細長いおっさんが、相棒に黒い石の嵌ったペンダントを差し出している。
何か曰くのあるペンダントらしいが――
まぁ、触れずに視るだけなら大丈夫だろう。
それよりも――と、俺は脇の棚へと視線を向ける。
おっさんは契約者じゃないので、脚竜族の声は聞き取れない。
一緒に来てはみたものの、俺の出番はないはずだ。この機会に自由に視させてもらおう。
『インスペクト』
棚には比較的小さな物が整然と並べられている。
これらにどれほどの価値があるのか。
そう思って、ひとまずは眺め始めたんだが――視れば視るほど中々に興味深い。
流石は鑑定屋所蔵の品というところだろうか。
精錬から2000年以上経過し、刃の朽ちた銅剣。
『力』が釉と共に焼きこめられた、200年前の陶器の壺。
レンズの表面に光術の残滓を感じる、1200年ほど前の単眼鏡。
死の力を宿す、希少な真竜族の鱗。
目に映る範囲の情報だけでも、その処理で脳が焼き切れそうに痛む程だ。
だが、せっかくの機会を失う訳にはいかない――
「――おい。戻るぞ」
相棒の声が掛かる。
――その瞬間。
俺は自分が意識を失っていたことに気付いた。
――いつのまに? どのくらいの時間、気を失ってた?
混乱する俺を他所に、相棒の言葉は続く。
「いつもの調子で没頭し過ぎたんだな。――ここには特殊な品物が多すぎる」
――その通りではあるが、それにしても気を失うというのは異常事態だ。
それだけの力を秘めた物があったのだろうか?
気に掛かる。
気に掛かる。
その何かが気に掛かる。
俺は――目を瞑ると『リコール』の術を起動した。




