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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
247/308

235.問題児

『――で。結局お前は何ができるんだ?』


『お? なんだ? 海竜族一の若手と呼ばれる俺に、そんなに興味があるのか?』


 ――やっぱこいつ合わねーな。

 軽くお互いに名乗った後、何ができるのかを聞いただけなんだが――

 いきなりの()()に、げんなりとさせられる。

 それでも、辛うじて頷きを返すと。


『当然、泳ぐのが一番早い。もちろん力も強い。水術も――この年にしては上の部類だ。他にもだな――』


 自慢気に話す様子に、途中からは聞く気が失せてしまった。

 結局、普通の範疇だろ?

 自分で振っといてなんだが、早く終わんねえかな。


 何の気なしにサギリの方を見ると、凄い形相で睨まれていた。

 ――まぁ。(わり)ぃ。


「えーと。トリムさんみたいなそんな凄い(ひと)が、どうして私達を手伝ってくれるんですか?」


 今まで黙っていたユニィが口を開いた。

 流石は真面目娘だ。

 因みに――どうでも良いが、こいつの名前はトリムというらしい。


『そんなもん決まってるだろ?』


 ――頭の悪そうなセリフだな。その先が予想できそうだ。


『あのな――俺達海竜族も外に出なきゃ駄目なんだ。こんな場所でこそこそ隠れてっから、いつまで経っても絶滅寸前とか言われんだよ』


 ――ん?


 あまりにもの意外な回答に、一瞬硬直する。

 これは――評価を上方修正する必要があるかもしれねぇな。それでも普通の範疇だが。


「そうなんですか。種族の事を考えて――とか、凄いんですね」


『だろ? ああ――あのじじいにもその言葉、聞かせてやりてぇな。この話をした途端、(ひと)のこと問題児扱いしやがって』


 ――やっぱ必要ねぇな。


「話はまとまったかい?」


 ここで相棒が口を開く。どうやら俺のうんざりとした感情が伝わったようだ。

 俺は軽く頷いておいた。

 使えるかどうかは分からないが――こいつはとりあえず確保しておこう。


 そのまま。

 問題児との細かい話は相棒に任せて、俺はこちらを睨むサギリのフォローに回ることにした。


『まぁ、そんないつまでも睨むなよ。不用意に話を振っちまったのは謝るが』


 俺の言葉に、サギリははぁと溜息を吐いた。

 そのまま、少し離れた所で待つ案内役のじーさんの方へと歩いていく。


『また――マーロウみたいなのが増えるのね』


『おい。どういう意味だ?』


 聞こえているはずだが、こちらを振り返ろうとしない。

 ()()()()と同類にしてもらったら困るんだが。


 一竜(ひとり)何やら盛り上がっている問題児を眺めた。



 ――――――


「別行動しかないな」

『別行動だな』

『――遅い』

「仕方ない――ですね」


 ロゼ何とかの漁村まで戻ってきて。

 改めて、泳いで来た問題児と合流したんだが――


 こいつ。

 薄々気付いてはいたんだが、陸上での動きが(のろ)すぎる。

 人が歩くのとほとんど変わらない。

 つまりは――問題外というやつだ。

 ひとまず俺達が陸路を行く間の道中は、泳いで追って来てもらうしかないだろう。


『あー。そいつなんだけどよ――俺、この辺から離れるの初めてでよ』


 ――おい。

 胸を張りながら言ってるが、そいつはつまり――


『さっきから言ってる「せいと」ってのか? どこにあるのかさっぱりなんだよな』


 ――評価は下方修正しておいた。


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