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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
245/308

233.幻像

「こっちじゃよ」


 洞窟の入口。

 入ってすぐの二股を左に進む。

 洞窟の幅はそこそこといったところだが、天井は高く陰っていて。

 人族より体が大きい俺達でも、今のところは圧迫感を感じない。


 歩を進める俺達の目印は、先導するじーさんの明かり。

 皆で黙って後に続いていたんだが――


「あの――何で海竜族の(ひと)達はこんな所に住んでるんですか?」


 ユニィの声が響く。

 ああ――確かに。

 事情を知らなければ、そんな感想になるんだろうな。

 続いて相棒の声が響く。


「もちろん、隠れ住むためですよ」


「魔物からですか? 確かに――」

「いいえ――人族からです」


 ――再び。沈黙が訪れる。


 まぁ、ユニィが知らないのも当然といえば当然。

 既に1000年以上昔の話なので、支竜族に関する研究者や歴史家。そういった一部の人族しか知らない話なのだ。

 例え同じ支竜族たる脚竜族の中でも、その辺りの経緯を知るものは僅かだろう。

 ――無論、俺は知ってたがな。


「――今となっては昔の話じゃよ。ほれ」


 じーさんの声と共に右側の壁が明かりに照らされる。

 ――と。


『『ファンタズム(幻像)』――か』


 突然現れた側道に――思わず『インスペクト』を使い、視てしまう。

 元々の岩肌に沿って展開される、光の屈折と反射を用いて作られた幻像。

 初歩の光術の一つであり、陽光の元で見たならばあるいはといったところだが――薄暗い洞窟の中、松明や光球の明かりだけで()()を看破することは困難だろう。


 そのまま側道に入る明かり。

 俺達はその後を追う。


 ――沈黙が続く。


 側道の中は、先程までと比べて幅は半分。サギリと横に並ぶと窮屈な幅に狭まっている。

 一方。相変わらず天井は見えないほどに高い。


 ――沈黙が続く。


 相棒とユニィの靴音だけが、洞窟の中に響いている。

 遠く近く響くその足音が――所々曲がった洞窟の先。そこに、この足音の主が待ち構えているのではないか――そのような幻覚を生じさせる。


 ――ただ明かりの後を追う。その数分の沈黙を永遠に感じ始めた頃。


 曲がり角の先に光を見る。

 波のしぶく音を聞く。


「まもなくじゃ」


 角を回る――と、視界が開けた。

 広がる青。

 足元の岩場に砕かれ、白く濁る波頭(なみがしら)

 踏み出し、振り返り見る断崖。


 ――なるほど。

 海竜族が好むと言われる場所そのものだな。


 などという俺も、実際には海竜族の集落どころか海竜族に会うのも初めて。

 いやが上にも期待が高まるというやつだ。


 などと考えながら視線を戻すと、じーさんは岩場を先に進み始めていた。

 他の面子と共に、俺も後を追う。


 ――と。

 1分も経たない内に、じーさんが足を止め、海の側を向いた。

 どうやら、集落に到着したようだ。


 すぐさま駆け寄って。

 海の中を眺めようとし――()()()()()


 軽く驚いている間に、水面にその姿が現れる。

 文献と同じく。

 四肢は魚の様なヒレを持ち、首は長く持ち上がり――その口が開いた。


『なんぞ用か? 隣人達よ』

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