231.支竜族
第3エピソード開始です。
『――つまりだ。脚竜族の進化というのは、その内包する――』
『それで――結局どこに向かっているのかしら?』
俺の解説に――興味の無さそうな声で、呟きを被せる。
サギリに会うのは久しぶりだが――相も変わらぬ反応に、思わず口角が上がりそうになる。
いや、無論。
実際に上げたら面倒なことになるのは明白なので、上げたりはしないのだが。
『もう忘れたのか? ロゼ何とかっつっただろ?』
『ロゼッタでしょ? ――だから。そのロゼッタが何かって聞いてるのよ』
再び。
口角が上がりそうになるのを抑える。
『それは、到着してのお楽しみ――ってやつだな』
『はぁ?』
おっと。
少し勿体ぶり過ぎただろうか。
俺が口を開きかけたところで、俺の背の上から声がした。
「支竜族の中でも、泳ぎの得意な者達に会いに行くのですよ。お嬢さん」
――また始まった。
これさえ無ければ良い奴なんだが――本当に困ったものだ。
やたらと丁寧な口調が、余計に気持ち悪いという事が分からないんだろうか。
大体――お嬢さんって誰の事だ?
案の定、不機嫌そうにサギリが口を閉ざす。
――ほら見ろ。言わんこっちゃない。
そんな中、代わりに口を開いたのは――
「支竜族――ですか? 脚竜族じゃなくて?」
「――ん? ああ――そうですよ、ユニィさん。私達普人族や獣人族等を総称して人族と呼ぶように、脚竜族を含めた総称が支竜族です。ただ――脚竜族以外は希少種となりますので、総称である支竜族という呼称は、一般の人にとって馴染みがないのでしょう」
「ということは――これから、その希少種に会いに行くということなんですね」
「はい。これから会うのは――海竜族と呼ばれる種族です。彼等の協力が得られれば、水中の探索も容易になるはずです」
――あーあ。言っちまったな。
知らない方が面白いだろうに。
その後も相棒とユニィの会話は続いているが、俺の興味を引くような新しい事柄はなさそうだ。
『ねぇ。こんなので本当にリーフェを見つけられるんでしょうね?』
サギリが小声で話し掛けてきた。
『――――さあな』
『さあな――って。マーロウ、貴方――』
『――物語でも何でも。先が見えてしまうと面白くないだろ?』
『こんな時まで何言ってんのよ!』
真面目な話なんだが――やはり、サギリとは意見が合わない。
こんな時に親友が居てくれたら――と思うが、今あいつが居るのは西の果て。
いや――それよりももっと遠い世界の裏側か。
いずれにせよ、あいつはここには居ない。
――先が思いやられるな。
俺は、悟られない様に軽く――溜息を吐いた。




