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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
242/308

230.広がる水面

 僕がこの地で目覚めてから――2週間。


 慎重に慎重に。

 何があるか分からないから――慎重に。

 周囲の探索を重ねてきたんだけど。


『どんだけいるんだよ。ここ』


 何度も。いつでも。どこででも。

 『サーチ』する度に――周囲に伸びていく大量の光の糸。

 薄っすらと光るその光が指し示すのは――


『魔物なんか蹴散らしたらどうだ?』


『いやいやいや。無理だから。蹴散らすとか無理だから』


 ステュクスのおじさんが無茶を言う。

 僕はポーター。

 冒険者とか傭兵とかじゃないんだから、魔物と戦うなんて無理だ。


『そうか? 術で視界を奪っておけば、大抵の魔物は無力化できるだろ?』


『それ、おじさんだけでしょ!』


 確かに。おじさんの闇術を使えば、魔物の視界は塞ぐことができる。

 でも同時におじさん以外の――僕の視界も塞がれてしまうのだ。


 この前。大きい鼠の魔物達に囲まれて、突然おじさんが術を使った時には――本当に死ぬかと思った。

 突然視界が真っ暗になって何も見えないし、仕方ないから黒の遺跡の時みたいに『スキャニング』を使ってみたけど――分かったのは地面の形だけだった。

 そもそも『スキャニング』中は動けないし、その間も周りからどさどさと音がするし――()()()()はもう勘弁してほしい。


 そんなことを話しながらも。

 歩みは慎重に、周囲の音に耳を澄ませながらゆっくりと進んで行く。

 目覚めた場所を中心に、渦を描くように徐々に外側に向かって探索しているけれど――大きな岩に囲まれているため、視界がとても悪い。

 もしここに草木が生えていたら、さらに視界が悪化するところだったけど――そこは不幸中の幸いというところか、1本も草木は生えていない。

 ――とは言っても。

 やっぱり視界は悪いことに変わりは無いし、僕はゆっくりと慎重に進んでいたんだ――けど。


 ――――ん?

 神経を研ぎ澄ませた僕の耳に、その音は届いた。


 これは――水の流れる音?

 ステュクスおじさんの方を見ると、おじさんと目が合った。

 どうやら、おじさんにも聞こえたようだ。


 音のする方に急いで向かう――と。

 岩の間に開ける視界。

 目の前に広がるのは――水面。


 遥か遠くまで見通せるような。

 それは海と呼ぶしかないような――でも。

 良く見ると水は、一定の方向に流れていて。


 もしかして――大きな川?


 そういう目で見てみると、足元も水の流れる方向に微妙に傾斜している気がする。

 ――何となく。


 いや、そんな事よりも――


『もしかしたら、お魚がいるかも! 『サーチ』!』


 僕が『キーワード』を口にした瞬間に――水中に向かって伸びる、無数の光の糸。


『ビンゴっ!』


 ビンゴって何だっけ――という考えが頭を過りかけたけど。

 そんな考えは一瞬で吹き飛んでしまう。


『これで、地獄の乾燥食生活ともおさらばだよ!』


 マーロウから送られてくるのは、長期保存の効く乾燥食ばかり。

 いい加減飽き飽きしている。


 だから、現地調達できる食料がないかと探していたのだ。

 動物型の魔物を倒せば、そのお肉を食べることもできるんだけど――やっぱり、魔物の肉には抵抗がある。

 魚が獲れればそれに越したことは無いだろう。


 僕はウキウキしながら、ステュクスおじさんに魚のことを伝えた。


『――なぁ。魚をどうやって捕まえるんだ? お前』



 ――――とりあえず。

 ユニィに泣きついて、脚竜族でも使える銛を『ポケット』経由で入手した。





 でも。

 同じ泣きつくのなら、乾燥食以外の食料を送ってもらえば良かった事に。

 ――後になって気付いた。

第六章 第2エピソードはここまでです。


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