229.提案
――気付かれてしまったのなら、仕方ない。
もう少しまとまってからのはずだったんだがな。
俺は口を開く。
『いや。熱心に読んでたからな。――邪魔になるんじゃねぇかと思ってな』
これは事実だ。
一部の言葉が抜けてはいるが。
「それはそうですけど。――それなら、私が読ん」
『ってことで、今後の方針を話し合うか』
途中で話を断ち切り、相棒にも聞こえる形で声を掛ける。
多少は不満に思うかもしれねぇが、まぁそいつは仕方ない。
余分な時間を割く方が、よっぽど勿体ないからな。
『んじゃまずは――今回起きたことの再整理からだな』
口を挟まれることが無いように、話を先に進める。
俺達は、どこかに飛んだリーフェの話やそれを目撃したユニィの話。
これらを簡潔にまとめ直す。
『簡潔にまとめると――リーフェの奴は魔人との戦いの最終盤で急に浮遊して、ホール天井付近に出現していた『黒い穴』の中に消えた。『黒い穴』は魔人との戦闘中に出現し、リーフェを吸い込んだ後消滅。以降は二度と出現しなかった――と』
「はい」
『で。確定じゃねぇが、『黒い穴』はお前の能力によって遺跡が起動したんで出現した――ってとこか』
「はい。多分そうです。あの時も、突然全身に寒気を感じたので」
まぁ、ここまではこんな所だろう。
俺はちらと相棒を見たが、特に異論はないようだ。
それじゃ次は――
『次に。リーフェがどこに行ったかだが――これは『サーチ』の光の方向からすると、2つに絞られる。つまりは――西の果て。西海の向こう側か、それとも世界の裏側かだ』
ユニィの返事はないが、そのまま続ける。
『――だが恐らく。リーフェから聞き出した景色からすると、後者。世界の裏側に居るものと推定できる』
ここまでは以前も考えていたところだ。
返事を待たずに続ける。
『それじゃ肝心の、これからどうすべきかだが――――俺は西の海。海底にある遺跡を目指すべきだと考える』
――相棒を見る。
相棒は、先を促すように腕を組んでいた。
どうやら、ここまでは同意見のようだ。
『――理由は2つ。1つ目は北の地の――黒の遺跡だが、こいつはリーフェが飛んだ後に完全に停止している。壊れたのかエネルギーが不足しているだけなのか、その理由は不明だが、いずれにしてもすぐには使えないだろう』
これにはユニィも頷いている。
『2つ目はこの本の記述だ』
そう言って先程読んでいた本の内、2つを開く。
『ここにある通り。かつて奇術師は、西の海で海底の遺跡を起動させ姿を消したとある。そして――その遺跡は、こちらの本にも載っている。つまりは実在する遺跡ということだ』
「でも――海底なんて、どうやって行くんですか?」
『それについては――1つ俺に心当たりがある』
俺は口角を上げ、相棒を見た。
『――だよな?』




