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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
240/308

228.経験

 ――本から目を離して視線を上げる。

 そこに在る相棒の瞳。


 どうやら俺が読み終わるのを待っていたようだ。


『――ってか、読むの早すぎねぇか?』


 思わず口から零れてしまう。

 こいつ。やっぱり脚竜族にしか興味ねぇんじゃねぇか?

 ――と言いたいところだが。


『ま。いつも通りって言やぁ、いつも通りだが』


「経験だ。経験。お前もその内早くなるだろうよ」


 ――どうだか。

 俺は逸れてしまった話を元に戻す。


『んな事より、分かった事をまとめようぜ』


「――ん? ああ、そうだな」


 相棒が視線を横に動かす。

 ――ああ。

 言いたいことは分かるが、今は俺達だけで良いだろう。

 俺は首を横に振っておいた。



 それじゃあ始めるぞ。

 ――そう言わんばかりの相棒の目線に頷きを返す。


 じゃ――まずは。

 《黄昏の奇術師

  ・奇術師は世界を巡った

  ・王より船を借り西の海へと向かった

  ・海の底の遺跡にてその姿を消した》


 紙を机上に置き、気付き事項を箇条書きにしていく。


 《門の遺跡と奇術師

  ・奇術師は『門』と呼ばれる遺跡より現れた

  ・『門』と呼ばれる遺跡は、転移するためだけのものではない

  ・『門』を起動するためには『鍵』と呼ばれるものが必要

  ・奇術師は多くの『門』を開くことが目的だった

  ・去る時は自らの『奇術』で消え去った》


 《全国遺跡巡り――今、遺跡が熱い!

  ・遺跡は『力』を糧に稼働し事象を齎す

  ・各地の遺跡の場所が記されている》


 ――やはり。

 書き連ねてみると違和感がある。

 初めに読んだ『黄昏の奇術師』と次に読んだ『門の遺跡と奇術師』。

 この二つの間には明確な違いがある。


 姿の消し方だけではない。

 王との関係も異なっているように感じる。


 『門の遺跡と奇術師』では王と成り富に酔った長の前から姿を消し、『黄昏の奇術師』では時の王に惜しまれながらも最後には協力を得て旅立っている。

 そう――これら二つは似ているようで、両者の関係性が全く異な――――いや。ちょっと待て。()()()


 俺は大きな思い違いをしていたようだ。

 だとするならば――


「おい」


『――あ、ああ。(わり)い』


 相棒の声で我に返る。

 お互いのメモを交換して――ああ。やはり。


『やっぱりお前には敵わないな。相棒』


「それこそ経験だ。経験。私がどれだけやってると思ってるんだ」


 困ったような、少し違うような。そんな感情が伝わってくる。

 その言葉には答えず――俺は再びメモに目を落とした。


 《『黄昏の奇術師』と『門の遺跡と奇術師』に関しては、異なる年代の物語と推定される

  魔人の寿命を鑑みた場合、両者における『奇術師』が同一人物か否かは不明》


 そのまま視線を下に移す。


 《南大陸中央の脚竜族の他にも、北大陸東端には飛竜族の遺跡が西端には――》


 ――これには敵いたくはないがな。


 苦笑しながら。

 メモから目を離して――視線を上げる。

 そこには。


「何で声を掛けてくれないんですか」


 ――頬を膨らませたユニィが居た。



 ――ああ。

 そういやぁ――声出しちまってたな。

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