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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
237/308

225.1冊目

『相棒。お前はどれから行く?』


「そうだな。私は――これだな」


 ユニィに渡した後の残りの3冊。

 その中から相棒の手にした本を見る。


 『門の遺跡と奇術師』


 リーフェが消える時、遺跡に現れたという(ゲート)

 この本で言うところの「門の遺跡」が「黒の遺跡」のことだとするならば。

 まさに今回の事象にぴったりの本だ。

 もしかしたら、「門」の出口の場所が分かるかもしれない。――流石の選択だ。


 それじゃあ――俺は。


『こいつにするかな』


 俺は1冊の本を、そっと前脚で掴んだ。


 『黄昏の奇術師』


 「黄昏」の言葉が、「西方」や「消え行くもの」を想起させる。

 リーフェの奴が居るのは西の果てか――それとも、世界の裏側か。

 いずれにせよ、ここよりも西側であることは間違いない。

 そして――で、あればこそ。

 そこに何らかのヒントが見つかるかもしれないのだ。


 各々、本を持った事を確認する。


『それじゃ30分後な』


 俺は本を床に置くと――表紙を開き、最初のページに目を落とした。



 ――――――


 《黄昏の奇術師》


 《かの奇術師は世界を巡りて(のち)。時の王に告げた。

  旅立つ為の船が必要であると。

  王はその言葉を嘆き、奇術師に翻意を促すも意は変わらず。

  (つい)には、南方への交易船の貸与へと至る。


  王は尋ねた。

  船を以って何処(いずこ)へと向かうのかと。

  奇術師は答えた。

  日の沈む彼方。この世界の中心へと続く道。その道を辿るのだと。》


 俺はページを一枚また一枚と捲り、本を読み進めていく。

 どうやらこの本は、奇術師と共に西方へと旅立った水夫達。

 著者が彼らから聞き取った内容をまとめ、文字に起こしたもののようだ。


 その本には冒頭の導入に引き続く形で、彼らの道行の記録が綴られていた。

 それは旅立ちの日に始まり、道中で遭遇する嵐、食料不足、海賊等の問題と。

 それらを奇怪な術で解決してゆく奇術師。

 やがて西の海を進んだ先にて、旅は終わる。


 《奇術師、徐に起ちて杖を掲げる。

  刹那。海原は沸き立ち白濁と化す。

  やがて視界の先は澄み、海底(うなぞこ)に石柱が群れを成す。

  惑う我々を船に残し、奇術師は宙を下り海底へと立った。


  その姿が我々の見た奇術師の最期。

  瞬いた後、再びの刹那。我々の前に残ったのは、ただ海原。

  その奇怪なる術と同じく、その姿は夢幻(ゆめまぼろし)の如く消え去った。》



 ――――――


 本を閉じる。


 ――分かった事を整理しよう。


 まずこの本は、奇術師の最期を記したものであること。

 次に、その最期の地はこの大陸の西側に広がる西果ての海。そのどこかであること。

 ここまでは確定だ。

 ――無論、この本の記述が正しければ――ではあるが。

 今はそこを疑っても仕方ないだろう。これらは確定事項として考える。


 そしてここからは推定だが――本で語られている奇術師の最期、その最期は真の最期ではなく。

 海底(かいてい)の遺跡を起動し、他の場所へと転移したのではないだろうか。


 そう、例えば。

 世界の――裏側へと。


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