224.合流
先導していた兵士が立ち止まり、左を向くとそのまま扉に手を掛ける。
促されて開かれた扉を潜った途端――
「マーロウさん! それと――えーと」
「ご無沙汰しております。ノルディスです。ユニィさん」
相棒がリーフェ達の契約者――そういやユニィという名前だったな――の手を握っている。
――まどろっこしいな。
俺は二人から視線を外すと、部屋の中を見回しながら口を開くことにした。
『それで。魔人と遺跡に関する資料はどこにあ――ぐっ。何すんだよ』
「おいマーロウ。まずは挨拶だろうが。挨拶。礼儀だぞ」
相棒が俺の頭を押さえている。
どうやら下を向かせようとしているようだが――挨拶とか礼儀とか。一体どの口が言ってるんだ?
お前だって、いつもは俺と同じだろ?
そうは思ったが、押し問答をしても仕方がないので素直に頭を下げておいた。
『よう。久しぶり』
「おふたりともお久しぶりです」
俺の適当な挨拶にも、律儀に挨拶を返してくる。
――そう言えばこんな子だったな。
そう思いながらも。相棒が力を抜いたのを確認して、俺は先程言いかけていた言葉を続けた。
『――まずは、例の資料を見せてくれないか?』
「はいっ!」
元気の良い返事と共に、ユニィが机の上の一山に手を伸ばす。
そこには4冊の本が積まれていた。
思ったよりも――少ない。いや。
これまで同種の記述を見つけられなかった事を考えると、多いと言うべきか。
「確認だけど、部外者の私達が閲覧しても良かったのかい?」
「ええ、問題ありません。表向きは伏せてもらってますが――一応、私達も今回の大魔討伐の貢献者扱いですので。その一竜を捜索するという名目だそうです」
――大魔討伐。
そう言われれば――ここに来るまでの町中が、勇者だの聖女だのでやけに騒がしかった気がする。
それどころではなかったので完全に無視していたが――当然と言えば当然か。
俺は納得すると同時。
一つ――引っ掛かっていたことを思い出した。
『なあ。そう言えば魔竜はどうなったんだ? リーフェの奴から魔人を倒したと聞いたんだが』
「え? 魔竜――ですか? それと魔人に何の関係が? それとも、リーフェの行方に係わっているんでしょうか?」
――ああ。こいつもか。
『いや。何でもない忘れてくれ』
どうやら、魔竜に関する記憶が無いのはリーフェだけではないらしい。
この分だと、今後誰に聞いても徒労に終わるだろう。
――だとするならば。
これ以上考えていても解決策はない。
俺もこの件に関しては忘れた方が得策だ。
そう切り替えて。
ユニィの示した4冊の本を、改めて見る。
その背表紙は――
『門の遺跡と奇術師』
『黄昏の奇術師』
『魔界伝聞録』
『全国遺跡巡り――今、遺跡が熱い!』
――ああ。そういうことか。
とりあえず、1冊はユニィに任せておいて――俺と相棒は、残り3冊の中身を確認することにした。




