222.蔵書室
今回も少し短めです。
「これ――全部なの?」
ソニアに案内された部屋。
蔵書室だというそこは、10m四方と決して広くはない部屋だったけれど。
中央の机を囲むように三方の壁には天井まで届くような本棚が配されていて、そのそれぞれが本で埋め尽くされている。
「うん――だけどね。こっちだよ。お姉ちゃん」
後を追うと、右側の本棚の真ん中あたりで立ち止まる。
そして――棚の中央下段を指さした。
「黒の遺跡の資料はまだ戻されていないけど――奇術師と呼ばれた魔人に関する書物なら。ここに」
そこに並ぶ本の背表紙には、何か文字が書いてある――みたいだけど、掠れてしまって読めそうにない。
以前リーフェの村の書庫で見た本は、昔の本でも劣化しない特殊なものだったけど――どうやらここにあるのは普通の本みたいだ。
少しだけ懐かしい気持ちになりながら背表紙を目で追うと、その中に。
かろうじて読めそうな背表紙を見つけた。
「――『門の遺跡と奇術師』?」
「そう。それが見せたかったもの」
――リーフェが謎の場所に転移したと判明した後。
今後の方針を相談していた私達に、声を掛けてきたのはソニアの方からだった。
真剣な顔をして、聖国に戻ったら見せたいものがあるという話で――今日。
私一人で聖殿を訪れていた。
「良くこんなもの見つけたね」
――正直。少し驚いている。
だって――今回の出来事を思い起こさせる表題もそうだけど、ソニアがこういう本に興味を持つなんて思わなかったから。
「うん――私、嘘つきピエロのお話。好きだったから」
――そうだったっけ。
ちょっと不思議な気はするけど、今は。
本の中身が気になる。
「ねぇ。この本古そうだけど、勝手に読んでも大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。古そうに見えるけどここにあるのは写本らしいし、許可も取ってあるから」
それでもかなり古いものなんじゃ――とは思ったけど、口にするのはやめた。
それよりも今は少しでも。
リーフェと再会するための情報が。
例え些細なことでも情報が欲しかったから。
棚から本を引き出してみると、見た目から想像したより、中の紙もしっかりとしていた。
本を中央の机の上に置き、表表紙を眺める。
『門の遺跡と奇術師』
背表紙と同じ表題。
――門の遺跡。
ここに書かれている遺跡が、黒の遺跡の事なんだとしたら。
私はその本の表紙を開いた。
サブタイトルがあまりに適当だったので修正しました。




