221.道化
諸事情により今回短めです。
「ここに来るのも久しぶりだな」
南北を繋ぐ航路の一つ。中央航路の南側の玄関口。
俺達は、そのホープ何とかという港町を訪れていた。
『本当に良かったのか?』
潮の匂いの中。
港へと向かう道を辿りながら、隣を歩く相棒に声を掛ける。
「ああ。必要ならまた訪れるさ」
肩を軽く持ち上げる相棒に、頭を下げかけて――止めた。
代わりに口の端を軽く持ち上げる。
『そう――だな。あいつを追った方が新しい事が判明しそうだしな』
「まぁ、そういうことだ」
返す相棒の口の端も、俺と同じく吊り上がっていた。
確認するまでもなく、俺達は根本は似た者同士――という事なんだろう。
――だが。
『――なあ。そろそろその恰好は止めにしないか? 調査は一旦中断だろ? 気が散って仕方ねぇんだよ』
「何言ってるんだ。今回の旅も脚竜族の調査のようなもの。だとするならば、この服が適当だろう。何より――」
『いやいや。どこが適当なんだ。どこが。目立つ――いや、目障りなだけだろ?』
「そんなことは無い。ほら見ろ。私に似合ってるだろ?」
そう言って手を広げる相棒。
半身赤、半身黄色のその姿は――どう見ても、せいぜいが道化師といったところだが。
――ふと。
道化師という言葉に、嘘つきピエロとも呼ばれたホラ吹き奇術師の名を。
彼の逸話の一節を思い出した。
――彼は魔界を旅しその力を得た
それだけじゃない。
――彼は世界の果てを見た
頭の中で。
バラバラだった事柄が、徐々に徐々にと鎖のように繋がり始めていく。
まだまだ大きく欠けてはいるが、これは――
『行くぞ。相棒』
港へと向かう足が、自然と速くなる。
俺の後を追う相棒の服のことはもう――何の気にもならなかった。




