220.紙片の行方
イライラする。
どうしてだか分からないけど。
いいえ。分からないからこそイライラする。
勝利に沸く人族達も。
浮かない顔をしているソニアちゃんも。
いつもと変わらない前向きのユニィも。
ふわふわふらふらと、どっかに行ってしまったうっかり者も。
すべてが――私をイライラさせる。
――そんな中。私のイライラが伝わったのか、ユニィが声を掛けてきた。
「大丈夫だよ。サギリ」
リーフェが消えてから。
すぐにユニィが『サーチ』の術を使ったけど――その光の指し示す先は斜め下だった。
『心配なんてしてないわよ』
当然、すぐに地下に行く道を探そうとしたけれど――討伐隊の人達にはとてもそんな余力はない。
「――そうなの?」
『当然でしょ。――それよりも、返事はあったの?』
魔人の死を確認した後。
討伐隊と一緒に、遺跡前の拠点に戻ってきたのが半日前。
それからすぐに手紙を書いて『ポケット』に入れていたはずだけど――
「まだみたい」
『――ねえ。あなたの方こそ心配じゃないの?』
「――それがね。何となくなんだけど――リーフェは大丈夫だって分かるの」
私の問いに、ユニィは目を閉じて答えた。
「うーん。何でだろ。きっと――前よりも深い所で繋がっている。そんな気がするから。だから――分かるのかな?」
――――やっぱり。
何だかイライラする。
――――――
――――疲れた。
長かった質問攻めという名の拘束から解放され、ようやく一息をつく。
文字の書きすぎで右前脚――特に、中指が痺れている。
マーロウは以前から僕に質問してくる事が多かったけど――契約者ができて進化してからは、より拍車が掛かったように思う。
正直、報酬が無ければ断ってた所だけど――背に腹は代えられない。
――それにしても、何でだろ。
マーロウから送られてきた、やたら固いパンを拾いながら考える。
魔人と相対している時は、もっと大きな穴を開くことができたのに。
遺跡の中のソニアの所まで、ゲートを開いた時の事を思い出す。
確かにあの時は、ユニィやサギリの力を借りていたけれど――だとしても、一人でも直径80cmぐらいの穴を開くことができたはずだ。
ゲートにすると2分割で直径60cm弱。僕が通り抜けるのは無理だけど、あの時みたいに首を突っ込んで会話するぐらいなら大丈夫なはず――だったのに。
僕はもう一度『ポケット』を使ってみる。
目の前に現れる黒い穴。
直径は――約15cm。やっぱり、先程と変わらない。
確かに昨日よりは大きくなってるんだけど――あの時とは雲泥の差だ。
納得できないまま『ポケット』を閉じようとして――ふと思い出す。
そう言えば。あの後ゲートを繋ぎっぱなしだったから、『ポケット』の中身を確認してなかったね。
――もしかしたら、何か食べ物が入ってるかも?
――出てこい!
念じた僕の目の前に落ちたのは。
――一折の紙片だった。
えーと。
そういえば、ステュクスのおじさんどこいったんだろう?
とりあえず。
落ちてたものは、拾ってまた『ポケット』に入れといた。
次回から第2エピソードです。




