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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
232/308

220.紙片の行方

 イライラする。

 どうしてだか分からないけど。

 いいえ。分からないからこそイライラする。


 勝利に沸く人族達も。

 浮かない顔をしているソニアちゃんも。

 いつもと変わらない前向きのユニィも。

 ふわふわふらふらと、どっかに行ってしまったうっかり者も。

 すべてが――私をイライラさせる。


 ――そんな中。私のイライラが伝わったのか、ユニィが声を掛けてきた。


「大丈夫だよ。サギリ」


 リーフェが消えてから。

 すぐにユニィが『サーチ』の術を使ったけど――その光の指し示す先は斜め下だった。


『心配なんてしてないわよ』


 当然、すぐに地下に行く道を探そうとしたけれど――討伐隊の人達にはとてもそんな余力はない。


「――そうなの?」

『当然でしょ。――それよりも、返事はあったの?』


 魔人の死を確認した後。

 討伐隊と一緒に、遺跡前の拠点に戻ってきたのが半日前。

 それからすぐに手紙を書いて『ポケット』に入れていたはずだけど――


「まだみたい」


『――ねえ。あなたの方こそ心配じゃないの?』


「――それがね。何となくなんだけど――リーフェは大丈夫だって分かるの」


 私の問いに、ユニィは目を閉じて答えた。


「うーん。何でだろ。きっと――前よりも深い所で繋がっている。そんな気がするから。だから――分かるのかな?」




 ――――やっぱり。

 何だかイライラする。



 ――――――


 ――――疲れた。


 長かった質問攻めという名の拘束から解放され、ようやく一息をつく。

 文字の書きすぎで右前脚――特に、中指が痺れている。


 マーロウは以前から僕に質問してくる事が多かったけど――契約者ができて進化してからは、より拍車が掛かったように思う。

 正直、報酬(食べ物)が無ければ断ってた所だけど――背に腹は代えられない。


 ――それにしても、何でだろ。

 マーロウから送られてきた、やたら固いパンを拾いながら考える。

 魔人と相対している時は、もっと大きな穴を開くことができたのに。


 遺跡の中のソニアの所まで、ゲートを開いた時の事を思い出す。

 確かにあの時は、ユニィやサギリの力を借りていたけれど――だとしても、一人でも直径80cmぐらいの穴を開くことができたはずだ。

 ゲートにすると2分割で直径60cm弱。僕が通り抜けるのは無理だけど、あの時みたいに首を突っ込んで会話するぐらいなら大丈夫なはず――だったのに。


 僕はもう一度『ポケット』を使ってみる。

 目の前に現れる黒い穴。

 直径は――約15cm。やっぱり、先程と変わらない。

 確かに昨日よりは大きくなってるんだけど――あの時とは雲泥の差だ。


 納得できないまま『ポケット』を閉じようとして――ふと思い出す。

 そう言えば。あの後ゲートを繋ぎっぱなしだったから、『ポケット』の中身を確認してなかったね。


 ――もしかしたら、何か食べ物が入ってるかも? 

 ――出てこい!


 念じた僕の目の前に落ちたのは。



 ――一折の紙片(今一番見たくないやつ)だった。



 えーと。

 そういえば、ステュクスのおじさんどこいったんだろう?




 とりあえず。

 ()()()()()()は、拾ってまた『ポケット』に入れといた。


次回から第2エピソードです。

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