表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第六章 謎解き騎竜
230/308

218.リコール

 黒い穴が現れてから消えるまでの時間が約5分。

 そして、こうして手紙をやり取りする場合。

 返答と共に再び黒い穴が現れるまでに要する時間が約10分。


 これが、俺とリーフェが『ポケット』を使って会話する場合の標準的な所要時間だ。

 即ち。

 この方法を用いた場合、一度の手紙のやり取りに約15分の時間を必要とするということだ。

 最近はヘブンズゲートとかいう複合術を使って時間短縮しているが――それでも、お互いに返答を書く時間は必要となる。


 そして、今。

 出現から既に5分以上が経過し、黒い穴は消えている。

 このまま返答を待つのも良いが――俺はもう少し()()()ことにした。


 ――『リコール(記憶再生)』。


 念じると同時。

 視界の端に先程の光景が――再び。

 紫光の糸が映る。黒い穴が現れる。


 ――ここだな。


 俺は、記憶の中のその瞬間に注視する。

 それだけで。

 目の前の光景が――時が止まったかのように静止した。


 静止した光景の中。

 俺が着目したのは――15cm程の黒い穴。

 3週間前と比べて、3割程大きくなっているが――今。着目すべきはそこじゃない。

 その穴の裏側の――光の糸。紫色の光。その伸びる方向だ。


 この光は2点間を直線で結ぶ。

 つまり、光の伸びる先にあいつが居るはずなんだが――

 光は斜め下方向。

 地面へと向かって斜めに伸びている。


 ――そうか。

 ここで俺は()()させられていたんだな。

 思わず口角が上がる。


 無論だが。

 この円環(ドーナツ)状の世界において。

 北と南に離れるほどに。東と西に離れるほどに。

 2点間を結んだ直線は、より角度を深くして地面へと向かうことになる。


 今居る場所とリーフェ達の向かった遺跡。

 2点間の距離は、東西はさほどでもないが南北は大きく離れている。

 3週間前の時点でも、30°程度の角度で地面に向かっていた。


 そして今。

 目の前に映る光は、45°程度の角度で地面に向かっている。

 ただし――遺跡のある北ではなく西に向かって。


 ――笑いが、腹の底から込み上げてくる。


 何が起こったかは分からないが――いや。あいつの事だ。

 何が起こってもおかしくない。

 一体。

 どんな返答があるのか――楽しみで仕方がない。


 目を閉じ――視界を現実に戻すべく『リコール』の術を解除する。


 なあ――お前はどれだけ俺の予想を超えてくれるんだ? 親友。


 その答えまであと少し。

 2、3分といったところだろう。

 俺は目を開いて――――




『――っはっ! ははははははっ! おまっ!』



 それは――いくら何でも反則だろ?

 俺の腹筋を壊す気か?



 俺の目の前にあったのは。

 空中の黒い穴から10cm程突き出して引っ掛かった――リーフェの鼻先だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ