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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
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216.奇怪な景色

『おい。起きろ寝ぼすけ』


 呼び掛けると同時。

 目の前で眠りこける同族を足蹴にする。


 見たこともない奇っ怪な模様の同族だが――

 まあ奇怪と言っても、周りの景色に比べればさほどの事ではないだろう。

 なかなか目覚めない同族にもう一度蹴りを入れ、周囲を再度見回した。


 今俺ともう一竜(ひとり)が居るのは、周囲より一段低く平らとなった窪地だ。一段低いのが原因か、少し薄暗い。

 窪地の中を見回すと、所々には柱のような縦長の岩が立っている。

 そのまま窪地の外側に目を向けると無数の大きな岩が転がっているが、その岩の向こう側がどうなっているかは分からない。


 だが――奇怪なものは()()()にある。

 頭上。中天に輝く光。

 だが淡く白く輝くそれは、日の光でも月の光でもない。

 日の光よりも弱く。月の光よりも強く。周囲を確認できるほどには辺りを照らしていた。


 そして――その光の向こう。そこには灰白色の太い帯が星空を二分している。

 太い帯の端は、大きな岩の影に隠れていて見えないが――空に掛かる帯等、聞いたこともない。


『どこここ?』


 間の抜けた声が耳に届く。

 ――ようやく。お目覚めの様だ。


『やっと目覚めたのか、寝ぼすけ。まずお前にはこの状況を説明して――』


 振り返りながら掛けた声が。

 起き上がった同族の胸元を見て――思わず途中で止まった。


『――なんで。俺の皮袋をお前が持ってるんだ?』


 ――どうやら。

 奇怪なのは、景色よりもやはりこの同族(寝ぼすけ)の方らしい。



 ――――――


 ――――つっ。


 全身に感じる痛みに、意識が引き上げられる。

 多分この感覚は『ブレイク』の反動だろう。

 発動時間が短かったから動けないほどではないけど――痛い事には変わりない。


 そう言えば――結局どうなったんだっけ?

 ぼんやりとする頭で考える。

 確か/魔人との戦い/の終わりに体が浮いて――天井の黒い穴に吸い込まれて。視界の端にまた文字が浮かんで。


 ――ああ、そうだった。

 てっきり5回進化だと思ってたけど、いつもと違って文字が「変化しました」になってたんだよね。

 思い出しながら、進化樹を開く。

 そういえば、結局4回進化もちゃんと確認できてなかった気がする。

 そんなことを考えながらも、進化樹に目を走らせる。


 ――『ゼノラプトル』の下は――と。

 えーと――『シンギュラリティ』と『ユビキタス』? 何それ?


 そんな僕の目が捉えたのは、今まで以上に訳の分からないクラス名が並列に並んでいる姿だった。

 どんな特徴があるのか気になるけれど――今のぼんやりしてる頭じゃ、考えても分かりそうにない。


 だから今は――

 僕は頭を振ると、周囲を確認することにした。

 記憶があやふやだけど、どこか他の場所に飛ばされたみたいだし。


 立ち上がり、周囲を見渡した――けど。


 ――うーん。薄暗いね。


 薄暗い中辛うじて見える範囲では、いくつかの石柱みたいなものが少し離れた場所に見える。

 当然だけど――見覚えがない。


『どこここ?』


 思わず呟いてから――後悔した。

 目の前で動く影。黒くて見えなかったけど――何か居る?

 慌てて後ろに飛び退く。けど。


『やっと目覚めたのか、寝ぼすけ。まずお前にはこの状況を説明して――』


 目の前に居たのは――/初めて見る/壮年の男竜(おとこのひと)だった。

 体の模様は薄暗くて良く見えないけど、体色は黒っぽい。

 安心して体の力を抜いた。


『何だよ。脅かさないでよおじさん――ねえ。ここってどこか分かる?』


 僕の問いに――おじさんは答えない。

 何だか様子がおかしいと、僕が気付いた時。


『――なんで。俺の皮袋をお前が持ってるんだ?』


 ――おじさんが訳の分からないことを言い出した。


『いや。これ僕のだから』


『そんな訳ないだろ。その傷にも染みのような跡にも確かに見覚えがあるんだ。――ああそうだ。内側に俺の名前が刻印してあるだろ? ステュクスってな』


『そんなの無いよ。ほら』


 僕は皮袋の中が見えるように皮袋の口を開けて、おじさんに渡す。

 おじさんはしばらく中を覗き込んでいたけど――首を傾けながら皮袋から顔を離した。


『ね?』


 おじさんは不満そうな顔をしてるけど――僕のだからね。

 誰に貰ったのかは思い出せないけど。

 ――今は僕のものだから。



 とりあえず。

 皮袋の中を確認して、おじさんも渋々ながらも納得したようだ。


 ――それじゃ。

 おじさんが静かになったから、今一番重要な事を話し合おうかな。


 僕は少しだけ息を吐き、気持ちを落ち着かせて――おじさんに一番気になっている事を尋ねた。


『ねぇおじさん――食べ物持ってる? それか近くに村とかない?』


 ――うん。

 皮袋の中。()()ばかりで、もう何も食べ物が入ってなかったんだよ。

 色々気になることはあるけど、まずはお腹を満たさないとお話にならないからね。


『いや――』


 おじさんが目を瞑る。

 薄々気付いてたけど、何も持ってないしこの辺りにも詳しくないらしい。

 それじゃあ何でこんなとこに居るのか分からないけど、それは僕も同じ。

 とりあえず詮索は後回しで――


『食べ物――貰うからちょっと待ってて』


 僕は――

 親友(マーロウ)に向け、『サーチ』の術を起動した。


これにて第5章終了。

そして、めでたくプライマリストーリー完結です。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


当初予定と違って中途半端な終わり方ですが、続く第6章(セカンダリストーリー最終章)にて拾っていく予定です。


※いつも通りですが、いつもと異なる時間にAppendixを挟みます。

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