表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
221/308

213.重なる光景

 黒い影のような。

 魔人の後ろ姿――その中から、滲むように人の姿が現れる。


 その顔は、後ろ姿だから見ることができないけれど。

 その立ち姿は、このホールで最初に見た時。そのままに見えて――


 ――だけど。


 グルォォオォオ――と、文字通り言葉にならない叫び声と共に。

 振り上げられていた左前脚は、止まることなく魔人を薙いでいた。


 僅かな金属音を残し、魔人が吹き飛んでいく。

 だけど、僕には僕達には。それを目で追う余裕は無い。


 一歩一歩近づく、雄大な体躯の威圧感。

 その動きを注視しながら、中断していた術を再構築していく。


 動けないこの状態で、もはや。

 その意味があるのかは分からないけど。

 それでも――少しでもその攻撃を防ぐため、何かが変わる可能性を生み出すため。


 ――だから。


「目を閉じて!」


 銀騎士のお姉さんの言葉に、咄嗟に目を瞑ることができたんだと思う。


 目を瞑っていても分かる強力な光を、瞼の向こう側に感じる。

 それは一瞬の出来事。

 だけど――状況を大きく変える一手で。


 ギュロギュロと鳴り響く魔竜の咆哮と、ドンドンと鳴り響く重い音。

 その音に目を開いた僕が見たものは――目を閉じ、前脚で宙を掻き、尾をでたらめに振り。暴れ回る魔竜の姿だった。

 どうやら、お姉さんは光術で魔竜の目を眩ませたらしい。


 ――だけど。


 体が動かせないこの状態で、僕は一体何をすれば良いんだろう。


 勇者のお兄さんが、たまたま意識を取り戻すことに期待する?

 それとも、一人ずつ足元にゲートを展開してみんなを逃がす?


 ――正直に言って。

 戦いに慣れていない僕には、その一瞬では答えは出せなかった。


 そして。

 その一瞬の遅れが導いた状況は。



 ――振り回された尾が、頭上からソニア達を襲い。

 ――宙を掻くばかりだった前脚の。その振り上げられた右前脚の間合いに、ユニィ達が入っていて。




 ――ああ。


 時間がゆっくりと進んでいるように感じる。

 激しい魔竜の動きも。

 ()()()は永遠に来ないのかと錯覚するほど、全てがゆっくりと進んでいる。





 でも。

 どんなに遅く感じてもその尾の、その前脚の動きは止まることは無くて。


 でも。

 今準備している『ポケット』の術では、シールドを1回しか展開できなくて。



 でも。でも。

 ――僕は一体。どちらを――













 ――ふと。

 振り上げられた魔竜の尾が。




 ()()()()()()()()()()()()


 あの時は。飛び出したソニアの上に魔竜の尾が振り上げられた時は――――そうだ。


 そのまま僕は、魔竜の尾を止めるように『ポケット』の術をシールド状に展開する。

 同時にもう一つの術を。

 “僕”の()()()()()を。

 ()()()()()に起動した。



『ブレイクっ!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ