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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
216/308

208.役割

 二人が合流してから。

 形勢は大きくアニキ達に傾いていた。


 そもそも。


 もう少し人数が多かったとはいえ、アニキ達は()()()も魔竜を圧倒していたのだ。

 タイプの異なる前衛3人に、遊撃をこなす中衛、全体を見渡し補助に回る後衛。今回はもう一人卵おじさんも居る。

 本来の戦い方ができるようになれば、この状況になるのは火を見るより明らかだった。


 ――だけど。

 今回はそれだけでは終わらない。

 なぜなら。


 壁の上に魔人が現れたのは――そんな時だった。


「――――」


 軽く俯いたまま何かをしゃべったと思ったけど――ここまでは聞こえない。

 ただ、次の瞬間。


 壁にしか見えなかった魔竜が。その雄大な体躯が――僕の目に映りこんだ。

 理由は分からない。

 だけどどうやら――魔竜に掛けていた術を解除したようだ。

 魔人の姿は変わらず靄のようになっているけれど。


 警戒し。手を止め構えるアニキ達。

 そのまま睨み合いが始ま――らなかった。


 飛び退く魔人。


「好機っ」


 その声だけを残し、後を追う姿は暴走犬お姉さんのものだ。

 それと――金属音が鳴り響く。


(わり)ぃな。あんたにはこっちに付き合ってもらう」


 アニキが退避した魔人の側面から襲い掛かる。

 その攻撃を防ぐと、次は犬お姉さんからの攻撃。

 退路を制限され、魔人が徐々に魔竜から離れた場所に誘導されていくのが見えた。

 倒す為ではない。

 どうやら魔人を抑え込むのが目的の様だ。魔竜の方は、その間に残った面子で畳みかけるのだろう。


「これも防ぐかっ」


 ――多分。

 暴走犬お姉さんについては、どうだか分からないけど。

 うん、多分。




 戦いの中の大きな動き。

 魔人と魔竜が分断されてから、戦いはより一層激しさを増していた。


 先程まで、大人数と互角以上に戦っていた魔人を抑え込む二人。

 ひたすら突っ込む犬お姉さんと、その隙を利用することで魔人の注意力を削ぐアニキ。

 連携だけど連携じゃない。

 以前アニキの言っていた「放っときゃ良いんだよ」の本当の意味が、少しだけ分かった気がする。


 でもそれよりも――


「はぁっ!」

「ふっ!」


 青白く淡く。2本の光る剣が軌跡を描く。

 それを受ける魔竜の動きは――徐々に、徐々に。その鋭さを失っていく。


 グルォオォ――と意味を為さない咆哮がホールに響く。

 そろそろ限界が近いのかもしれない。

 だけど――ふと気づいた。


 ()()()も。今も。

 何故この脚竜族は喋らないんだろう?

 今まで唯一聞いた()()は確か――


「キュロちゃん」


 今まで静かだったソニアの呼び掛けに。

 僕は思考を中断する。

 そうか、もうそろそろだね。僕も準備しないと。


 僕の役割は、ソニアをその場まで連れていくこと。

 そして――考えながら、何気なく。傍らで持ち物を確認しているソニアを眺めた。

 あとはソニアが――って。あれ?


 ソニアの手に光る瓶に目が留まる。

 さすが聖国の掲げる巫女の一人。お高いガラスの瓶を使ってる――じゃなくて。


『ソニア――それって?』


「うん。これが私の切り札だよ」


 ソニアの持つその瓶の中で揺れていたのは。

 どこかで見たことのある――粘度の高い黒い液体だった。


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