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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
213/308

205.待ちびと

 無音――その中で。

 前触れも無く、アニキと勇者のお兄さんだけが左右に分かれて反転した。


 疑問に思って目を凝らす。

 すると先程までアニキ達が立っていた場所に、目の前に居たはずの魔人が居た。

 ――どうやったのかは全く分からないけど、一瞬であの位置まで移動したようだ。


 そして。

 その動きに瞬時に反応できる辺りが、この場に居る人達の強さなのだろう。

 僕がこうして考えている間にも。一撃を入れようと、4人ともが魔人の周囲を目まぐるしく駆け回っている。


 もちろん、僕には何が起きているかは全く分からない。

 いや、()()()と違って。動き自体は目で耳で――感覚で追えるけれど。

 その動きが、鳴り響く音が。弧を描く光の残像が何によるものなのか理解が追いつかないのだ。

 今まで魔物との戦闘に巻き込まれたりしたことはあったけれど。一言で言うと、それとはレベルが違い過ぎる。

 なぜだろう。()()()はここまで感じなかったけど――今は。

 こんな所にやって来た自分達の無謀さ。それを理解できた。



 戦闘が始まって2、3分といったところだろうか。

 お互いに致命的な一撃を入れることのできないまま、時間だけが過ぎている。

 何となくだけど――お互い出方を伺っているというか、防御を主体にしているというか――積極性に欠ける感じだ。暴走犬お姉さん以外。

 もしかしたら、アニキ達は後続の無口おじさん達を待っているのかもしれない。


 ――でも。

 ふと、違和感を覚えた。


 アニキ達はともかく、魔人は何を待っているんだろう?

 何かの罠? それとも援軍? もしかして、アニキ達が全員揃ってから大技で一網打尽にしようとしてる?

 色々な可能性が浮かんでは消える。浮かんでは消える――けど。

 今何かが――僕の中で引っ掛かった。

 だけど――何が?


 罠――可能性は無くはないけど、僕達が見ている限りこのホールにそんなものは仕掛けていなかったと思う。状況からすると、事前に仕掛けていたとも思えないし。

 援軍――他に魔物が居たとして、それを思い通りに操るのは無理だと思う。

 大技で一網打尽――人数が増えると不確定性が増すから、余計に一網打尽にはできなくなると思う。


 思い返した上で少しだけ考えてみたけど、引っ掛かることなんて――

 ――いや。ちょっと待って。

 僕は、ホールの奥側に目を向けた。

 そこには、高さ5m以上の()が――違う。


 そこに()()のは――


 僕は『サーチ』の術を起動する。

 紫の光が魔人と()に伸びていって――()がその色と形を変えた。


 そうだ――魔竜だ。

 恐らくあの時。魔人の姿が突然、影に変わった時だと思うけど――

 気づかない内に、魔竜の認識ができなくなっていたのだ。


 そして――それはつまり、魔人は魔竜の目覚めを待っているということで。

 だけども多分。アニキ達はこの事に気づいてなさそうで。



 だから僕は。

 覚悟を決めて――息を吸った。


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