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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
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204.惑乱

 一歩一歩と。


 近づく足音が――否応にも心臓を高鳴らせる。

 見ていたくはないのに、目を離すことができない。

 そして――そんな僕を追い詰めるかのように、魔人はこちらに歩を進めている。


 徐々に徐々に。

 近づくに連れ、()()の表情が見えてくる。

 眉間に皺を寄せて、困惑――じゃなくて警戒。

 このままだと見つかるのも時間の問題――いや。

 現実逃避はもう止めよう。これは絶対に見つかっている。


 ――せめて、ソニアは守らなきゃ。


 もう魔人との距離は30mを切っている。

 隣では銀騎士のお姉さんが、呼吸を浅く整えている。

 僕も覚悟を決め、術をいつでも起動できるように集中を始めて――


 突如。


 足音が消える。

 魔人の姿が朧に変わる。


 目の前で起こったその変化に、僕は息をのむ。思わず声を上げそうになる。

 そこに残ったのは宵闇のような――人型の影。

 いや、お姉さん?

 何だこれ? 震えが止まらない。


 何も――特別な術を使ったようには見えなかったけど。

 一体今――何が起きた?


 気づけば。

 いつの間にか蹲っていた僕の背中を、ソニアが揺すっていた。


 ――守らなきゃと思ったそばから。


 自分で自分が情けなくて。許せなくなって。

 腹の底に力を入れて。顔を上げて。岩の隙間から前を――見た。


 そこにある人型の影はそのままで。

 そして、先程よりも少しだけ近づいていて。

 だけど――そんな事よりも。僕の視界には――


 影のような姿の魔人が反転する。

 同時。

 響く金属音。跳ねるもう一つの影。


「やるなっ!」


 あれは――――暴走犬お姉さん!

 いつも暴走ばかりして、僕も周りも困らせられていたけれど。

 今だけは、その暴走が有難い。


「まったくあなたは――どうしてこんな時も一人で暴走するのでしょうか?」

「まぁ。()()()()()だな」


 勇者のお兄さんとアニキも、それぞれ剣とナイフを構えながら現れた。

 アニキは一瞬こちらを見た気がするけど――これも気のせいだよね。

 後は、無口おじさんと毒術お姉さんも――って、あれ?


「せめて、全員揃ってからにならなかったのか?」


 そこに現れたのは、あまり見覚えの無い顔のおじさんだった。

 えーと。

 そういえば、もう一人勇者の卵の人が追い掛けてたんだっけ?

 そういう目で見ると、何だか道中で見た覚えがあるような気もしてきた。


 ――どちらにしろ。

 無口おじさんと毒術お姉さんはまだ到着していないようだ。

 そう言えば、二人とも足が少し遅かった気がする。


「暴走とは心外な。好機はその時にしか訪れない。ただそれだけの事」


「あなたは――」

「分かった分かった。それよりも――来るぞ」


 僕がアニキ達に気を取られている間に。

 目の前に居たはずの魔人が――消えていた。


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