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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
211/308

203.重ね掛け

長くなっているので、一度区切りを挟みます。

 ――うーん。

 もう一度、魔人の全身を眺めてみる。


 遠目にも、先程とは明らかに違う。

 お姉さんから()()()()になった感じだ。


 ――って、あれ?


 何かが――おかしい。

 今、僕は――触れてはいけない()()に触れてしまったような。そんな感覚で。

 それに――そもそもあの魔人って、さっきも女の人だったっけ?


 僕が一竜(ひとり)混乱していると。

 いつの間に近づいてきたのか、耳元からソニアの囁きが聞こえてきた。


「ねぇ、キュロちゃん――私ね。お願いがあるんだけど――」




 ソニアの()()()を聞いた僕は、強く頷き返した。


『それぐらいなら問題ないよ。任せて』


 うん。

 何が何だか良く分かんないし、魔人のことを考えるのはもう止めにしよう。

 それよりも――

 僕は岩と岩の隙間からホールの入口を見つめる。


 ――もうすぐだ。


 僕は『サーチ』の術を解除して、息を潜める。

 ずっと使っていると、見える人には見えちゃうからね。


 術を解除した瞬間、魔人がこちらを見た気がするけど――多分気のせいだよね。気のせい。

 僕が術を解除しても、紫の光がもう一本ある気がするけど。それも気のせい。

 魔人がゆっくりとこちらに歩いてきているけど。銀騎士のお姉さんが剣の柄に手を掛けたけど。

 それもこれも全て――



 ――――――


『また動いたわね』


 サギリの声に、目を細めて集中する。

 ――と、言葉通り。紫の光の指し示す方向が、さっき見た時から大きくずれていた。


「もうすぐ追い付くと思ったんだけど――またゲートを使ったのかな」


『そうでしょうね。全く――考えもなしにあんなの連発して、本当に大丈夫なのかしら』


「――分からないけど。私達は地道に進もうよ」


 『サーチ』の対象を再び()()に戻す。

 先遣隊が印したというその目印は、遺跡の深部まで続いているみたい。

 だから――これを近い順から辿ることで、リーフェとソニアを追い掛けているという訳だけど。

 思ったよりも奥まで進んでるみたい。そろそろ追い付くかな? と思ったのに。


『もう一回重ね掛けした方が良いかしら?』


 術の重ね掛け。

 同一の術を何度も使うことで、術の効果を増幅することができる能力。

 多分だけど――サギリのユニークスキル『循環』の効果の一つ。

 凄く便利そうだし、実際強力なんだけど――欠点が二つあって。


「そう――だね。でも、大丈夫?」


 一つは重ね掛けしても単純に効果を増幅できるわけではないこと。例えば2回で1.5倍、3回で1.8倍みたいに減衰していくみたい。

 そしてもう一つ――それが。術者への負荷。効果と違って負荷は2倍以上、3倍以上へと膨れ上がっているんじゃないかな。サギリは何も言わないけど。


『――問題ないわ』


 だから。

 サギリの感情は伝わって来てるけど――知らないことにした。私も。



 サギリの瞳が黄色く輝く。

 そして。そのまま――


『速度を上げるわよ』


 言葉通りに速度が上がる。

 契約してるから振り落とされないはずだけど――思わず、サギリの首にしがみつく。

 やっぱり――今までよりもかなり速い。


 直線の通路を駆け。

 曲がり角を直角に折れ。

 少し大きめの部屋を一瞬で抜ける。


 ――あれ?


 今。

 大きめの部屋を抜ける時に、何だか人の声がした気がするけど――気のせいよね。


 だってほら。

 対象をリーフェやソニアに切り替えると、もっとずっと先だし。

 精鋭部隊の皆はもっと先に行ってるはず――だもんね。



次回から第6エピソード後半です。

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