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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
202/308

194.灰金のリーフェスト

 展開されていた光球の光が遮られ。

 視界が黒く――黒く染まっていく。


 僕がその瞳の輝きに気付いた瞬間。

 大魔の周りから黒い霧が噴き出したのだ。

 恐らく闇術による目くらましだと思う。思うけど――


「ねぇキュロちゃん。みんなが。お兄ちゃんが。お姉ちゃんが――」


『大丈夫だよソニア。あの霧は単なる目くらまし。霧自体には攻撃力は無いから』


 そう、“僕”の言葉通り。

 視界を奪われることは厄介だけど――事この局面では、あの霧が戦局に影響を及ぼすとは思えない。

 むしろ――問題はその後に行使されたはずのもう一つの術。

 桃色に光った瞳。それが何を意味するのか――


「お母さん。お姉ちゃん。みんな――」


 そこまで考えて、ソニアの様子がおかしいことに気付いた。

 何だか顔面蒼白で――何かに怯えているように見える。

 当然“僕”も気付いたようで。


『ソニア! ほら見てよ。みんな大丈夫だよ』


 “僕”の視界の先では既に。黒い霧が薄くなり始めていた。


「ロッソお兄ちゃん!」


 その中に見えた影の一つに、ソニアが声を上げる。

 霧が徐々に晴れていく中――横たわる巨大な影とぽつぽつと佇む人型の影が見えている。

 僕には判別がつかないが、長い間一緒に居るソニアには誰の影なのか分かるのだろう。

 そのままソニアが走って近付いて――って《何してるの!》


 思わず声を上げようとしたけど、当然僕の声は響かない。

 ねぇ“僕”。ちゃんとソニアを止めてよ。そうしないと――


 ――そうしないと?


 一瞬過る――混乱。困惑。

 だけどその間も。僕の視界に映る光景はそのまま動き続けていて。

 何故か立ち止まったソニアと――振り上げられた大魔の尻尾に気付いた時。


『ソニア!』


 “僕”の声が響いた。“僕”の視界が急に後ろに流れ始めた。

 ――でも。それでも。

 この位置からではもう間に合わない。せめて『ポケット』の術が使えればと思うけど、それも叶わない。


 僕が諦めかけた――瞬間だった。


 それでも“僕”は諦めなくて。

 その瞬きする程の間に全身が冷たくなって。


『ブレイク!』


 そして“僕”の声が響いた。


 それは『ハイラプトル』の()()()()()

 それは調和から不調和への転換。

 それは――能力の偏在による超強化。


 腹の底に響くような。

 大魔の尻尾が地面に叩きつけられる音が、遺跡の中を木霊している。


 気付けば“僕”は。

 『スイフトラプトル』を凌駕するその速度で――ソニアを抱え、駆け抜けていた。


 勢い余って、大魔の顔の近くでようやく足が止まる。

 “僕”のその足は――小刻みに震えていた。

 僕も同じ思いだ。正直今のは――少し危なかった。



 ――この時。

 緊張からの開放で。興奮で。あるいは『ブレイク』の影響で。

 理由は分からないけど――耳が研ぎ澄まされていたんだと思う。

 だって――


『――イタ……ドコ……ン――』


 大魔から聞こえるはずのない()が、突然聞こえたから。

 腕の中のソニアも驚きの表情を浮かべている。


 『まさか』という思いが強い。


 もしかしてこの()の響きは――――脚竜族?

 いやでも――大魔というからには魔物だし。

 そもそもこんな巨大な脚竜族が居るなんて、聞いたこともない――


 ああ、そうか。


 唐突に気付いた。

 ()()()()()()()クラスが一つあるじゃないか。

 “僕”もそれに気付いたみたいで。


『もしかして――脚竜族? クラスは――』


 そう確か――『カタストロガノフ』だったっけ? 多分。美味しそうな名前。

 そう結論付けたところで、“僕”の視界に進化樹が広がった。

 そのまま一つのクラス名が淡く光り、大魔の額と黒い光で結ばれる。

 今まで気付かなかったけど、この“僕”は『アイデンティファイ』の術を使えたようだ。


『やっぱり――6回進化『カタストロフ』。でも――なんで?』


 目の前の文字に。積み重なる驚きに――そして少しの安堵に。

 “僕”は。僕は――忘れていた。考えることを放棄していた。


 何故――ソニアが立ち止まっていたのか。その理由を。

 桃色の瞳の意味を。






 ――突然。

 背中に衝撃が走った。


 吹き飛ばされ、回る視界の中“僕”にできたのは――

 体を丸めて腕の中のソニアを守ること。

 ただ、それだけだった。


 次話はメンテナンスの関係で更新時間がメンテナンスの前or後に変わります。

 恐らく、1時には間に合わないのでメンテナンス終了後(19時頃?)の更新予定です。

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