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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
197/308

189.見えたもの

 ()の中では、既に1ヵ月が経過していた。

 もちろん、体感時間はせいぜい1時間程度。

 場所も時間も飛び飛びで、一貫性がまるで見えない。

 今だって、なぜか一竜(ひとり)で玄関ホールに突っ立っているし、まるで質の悪い総集編を見せられている気分だ。


 だけど。

 これだけの時間があれば、幾らかは分かることもある。

 それは――この()()()()だ。


 今の僕は体も何も動かせなくてとっても暇なので、現実と()の違いを整理してみたんだけど。

 ――思った以上に違う部分がある。


 まず一つ目。

 ソニアと周りの人達との係わり方が違う。

 ユニィとアリアさんがいないし、アニキ達がソニアの家族になってるし――“僕”なんかユニィじゃなくてソニアと契約している。


 そして二つ目。

 一つ目とも関係するけど、“僕”と周り――特にアニキ達との係わり方も違う。

 まぁアニキが言ってたように、家族として扱われているということなんだけど。

 脚竜族殺し――改め無口おじさんも、視線以外は良い人っぽいし。


 三つ目は――


「さあ行くぞ騎竜。今日は王都外壁を一周だ」


 そこまで考えたところで、背後から声を掛けられた。

 振り向くまでもなく、暴走犬お姉さんだ。


『今日も僕が勝たせてもらうからね』


「ふっ。何を語っているか分からないが想像は容易い。しかしな――今日は勝たせてもらうぞ。スキルなしの条件とはいえ、()()()()なはずのお前に、続けて敗れる訳にはいかないからな」


 振り返った“僕”の額にお姉さんが人差し指を当てる。


『器用貧乏じゃないよ! ()()だよ!』


 “僕”の声は空しく響いているけど――

 そう、三つ目。

 それは“僕”のクラスが『ハイラプトル』だった――ということだ。

 確かに、元々僕が目指していたのは『ハイラプトル』、そしてその先の『オリジン』だった。

 だけど――今となっては『ゼノラプトル』である自分に慣れてるし、水面等で“僕”の姿を見ても違和感しか湧いてこない。


 僕が心の中で頷いている間にも。

 “僕”と犬お姉さんはさっさと出掛けることにしたようだ。

 ふたりで玄関の扉を潜って――


「あら、あなた達。もしかして――外壁の外側まで行くのかしら?」


 外に出る前に呼び止められてしまった。この声は――毒術お姉さんだ。

 “僕”が振り返ると、そこにはやはり。腕を組んでこちらを見る毒術お姉さんが居た。


「それでしたら、ついでに傷薬に使える薬草の採取をお願いできないかしら?」


「断る。例えヤーデ姉の頼みでも――」


「あらあら仕方ないわね。――そう言えば、今日の夕食の担当は誰だったかしら?」

「喜んで引き受けよう!」


 突然大声を出して頭を下げた犬お姉さん。

 “僕”が見たその目は、なぜだか大きく開かれていた。


「あらそう? それじゃお願いねミニア。――――こんな状況だから。ごめんなさい」


 ――()()()()()

 これが四つ目。

 この前、アニキ達が言っていた北部の運送ギルドの話だ。


 色々聞こえてくる話では、魔物の増加によりポーターの死傷者や行方不明者が相次いだ結果、王国北部では物流が完全に止まってしまったらしい。


 ――あっちの運送ギルドには知り合いがたくさんいる。


 だから。


 これは夢。夢なんだけど、やっぱり良い気持ちはしない。

 鬚じいちゃんにロゼばあちゃん。ジョディさんに脚竜会の皆。

 彼らに何かあったことを想像するだけでも、暗く沈んだ気持ちになってくる。


 僕がまたモヤモヤした気持ちになっていると。突然。

 今度は玄関の外側――“僕”の背後から勇者のお兄さんの声が聞こえた。


「皆さん――依頼ですよ」


「あら? この子たちは今から、私の為に薬草を採取頂く予定となってますの。少し後にして頂けませんか?」


「北部の町シュトルツまでの商隊の護衛です。これならあなたも、傷薬の原料を仕入れできるでしょう?」


 勇者のお兄さんの言葉を聞いて何かが引っ掛かる。


 ――ん? シュトルツ?

 何かどこかで聞いたことあるけど――どこだったっけ?



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