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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
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187.見守るもの

 モヤモヤが晴れない。


 ――結局。

 しばらく続けていたアニキとの会話では、ユニィの事は分からなかった。

 もちろん()()は、夢の中の事だとは分かっているんだけど。

 それでも――気になるものは気になる。もの凄くモヤモヤする。


 それに――だ。

 体が思い通りに動かないというのも、モヤモヤの原因だ。

 しかもそれでいて、“僕”が歩く時の足裏の感触や扉をくぐるときの胴が擦れる感触。ぶつけた尻尾の痛みなんかはやけにリアルで――とにかく気持ち悪い。

 そう。まるで病室で目覚めたあの時みたい――って。

 何だこれ?

 変な記憶まで、いつもよりも生々しいんだけど。



 そんな風に。

 僕がモヤモヤしている間に“僕”は階下に降りていたようだ。

 “僕”の視界に映る玄関扉の前には、ソニアの他にも二人の人が居た。


 一人は勇者のお兄さんだから当たり前なんだけど、もう一人は――どこからどう見ても銀騎士のお姉さん。

 まぁ、お姉さんは最近ソニアとセットだったし、夢の中でも一緒なのは当然だけど。


 そう思ってたら、お姉さんが声を掛けてきた。

 それも姿勢を改めて。


「リーフェスト殿。貴殿の助力感謝致します――この恩はいずれ」


『そんなの気にしなくても大丈夫だよ』


 “僕”が首を軽く左右に振り、否定の仕草を返す。

 意図が伝わったのか、お姉さんが「しかし」とか言ってるけど――

 一体どんな()()なんだろうこれ。いや、夢に意味なんてないか。


 僕の思考が寄り道している間にも、“僕”の口が開く。


『それよりも――ソニア。どうするの? 聖国に行くの?』


「えーと」


 ソニアは勇者のお兄さんの方をしばらく見上げた後。

 “僕”の方を向いた。


「――行かないよ」


『えー。そうなの? 何だか聖女の卵みたいなのになれるんでしょ?』


 “僕”の言葉を聞いたソニアの口先が少し尖っている。

 僕にはソニアの感情が伝わってこないみたいで、正確なところは分からないけど。

 ユニィがあの顔をした時に伝わってきた感情は不満だった――と思う。

 ――もしかして、勇者のお兄さんに止められたのかな?


 そんなことを考えていると、背後からアニキの声がした。


「おーい。そんな顔するなよソニア。まだガキなんだからよ」


 そのまま“僕”の脇を抜けていくと、ソニアの頭に手を置いてくしゃくしゃする。


「もう少し俺達に守らせてくれよ」


「そうですね。聖国にお越し頂けないのは残念でしたが――今後は私も微力ながらソニア様を護らせて頂きますので、御安心下さい」


 下を向いたソニアの口がさらに尖るのが見えた。

 そしてその口が開きかけて――言葉を発する寸前。

 勇者のお兄さんに遮られた。


「ありがとうソニア。――でも今は。僕達があなたを守ります。それでも――というのであれば。そうですね」


 お兄さんがソニアの前に膝をついて、顔を覗き込む。


「あなたが成長した時に――僕達を守ってくれますか?」


 皆が無言となる中。

 下を向いていたソニアの肩が少し震えて――止まった。


「――うん」


 その声はまるで――

 眠りにつく直前。あの時に聞いたソニアの声。

 その時と同じ声色だった。

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