181.時としてひとは余計なことをしてしまう
今回も少し短めです。
「『ナビゲート』っ!」
ユニィの声が辺りに響く。
同時に。
その手に持った紙の上に光点が浮かんだ。
そのまま眺めていると、2つ目の――今度は明滅する光点が現れる。
そこでふーっという吐息と共に、ユニィが僕達の方を向いた。
「ほら見てっ」
笑顔のユニィが差し出した紙――この大陸北部の地図――を覗き込むと。
大陸北端に印された✕印と重なるように明滅する光点が、中央よりも幾分か北側に点灯したままの光点が見える。
まさに。以前ロゼばあちゃんが使っていた『ナビゲート』の術、そのままだ。
『あら。随分進んだと思っていたけれど、まだこの辺りなのね』
サギリの言葉に僕も頷いた。
今居る位置は、地図の下端にある聖都から✕印までの7割といったところだ。
『そうだね。感覚的にはそろそろ目的地かと思ったけど――やっぱり、街道に沿ってるからかな』
改めて地図を見ると、今回の進路は町や村を経由する為にかなり遠回りをしていることが分かった。
恐らく、補給の為だろう。
これだけの人数で行動しようとすると、進む速度だけではなく、進路の面からも時間を要してしまうのだ。
僕がそんな分析をしていると。
ユニィが声を掛けてきた。悲しみと――少しだけ謝罪の感情が伝わってくる。
「えーと。あのね。そういうのじゃなくてね――どうかな?」
――しまった。ついつい地図を見て考え込んでしまったけど――そういう話ではなかったみたいだ。
『ああ、うん。ごめんねユニィ。ちょっと待っててね』
慌てて僕はその地図をユニィの手から奪い取り、強く念じながら叫んだ。
『多分僕にも――『ナビゲート』っ!』
背中から額に掛けて、少しだけ冷たい感覚が走る。
前脚に持つ地図に3つ目の光点が現れて――そのまま目的地を念じた瞬間。
脳裏に目的地の方向が浮かんだ。
地図を確認すると、4つ目の光点が明滅していた。
『やったよ! ユニィ。僕にもできたよ!』
「――ふーん。そう。良かったねリーフェ」
笑顔で振り返った僕を待っていたのは、無表情のユニィの顔だった。
――えーと。この感情は――
怒ってる? それとも悲しんでる?
でもなんで?
ねぇなんで?
――それからしばらく。
ユニィのご機嫌は悪いままだった。
本当。なんでなんだろう?




