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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
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176.白薬のヤーデ

 目の前に積まれる大小の草束。

 もちろん小さいのが薬草の束。大きいのが薬草じゃない方の束だ。


「あらあら。そんなに気落ちしなくても良いのよ? こっちにも使い道があるんだから。ほら、摺り下ろして麻酔薬にしたりとか。ね?」


 俯いているユニィに、柔らかい雰囲気の白ローブのお姉さんが声を掛けている。

 どうやら、薬草採取はこの人に頼まれたらしい。


「そうだよお姉ちゃん。ナエシ草(薬草)だってこれだけとれたんだから十分だよ。――ね? ヤーデさん」


「ええ――もちろんよ。これだけあれば、この間の戦闘で使った数以上の原料になるわ。道中で不足することは無いから安心して良いわよ」


 ソニアの言葉に、お姉さんが頷いている。

 だけど――ユニィは俯いたままだ。悲しいという感情が伝わってくる。


 うん。確かに――あの薬草の束(小さい方)は、ほとんど僕とソニアで採ってきた分だからね。

 だけど――ね。


『ユニィ。ひとにはね――向き不向きというのがあるんだよ。眠り草だけ選り分けて採るとか――それだって並大抵の才能じゃないよ。それもこんなに』


 僕は眠り草の束(大きい方)を見る。

 流石の僕にもこれはおかしいと分かる。


 何がどうしてこうなるのかは――考えれば考えるほど訳が分からないんだけど。

 もしかしたら、ユニィの『連環』スキルが影響しているのかもしれない。そんな気がしてきた。

 鑑定おじさんの鑑定結果でも不吉そうなことが書いてあったし。


 ユニィはまだ「でも」とか言ってるけど――


『だとしても、ユニィが悪いんじゃないよ。スキルが悪いんだよ。スキルが』


 そういうことにしておいた。



 ――――――


 それにしても。


 ユニィが落ち着いたところで、改めて僕は白ローブお姉さんの周りに置かれた道具を見る。


 砕いてすりつぶす為の変な形の器と棒。

 煮る為の変な形の鍋と蓋。

 混ぜる時に使う変な形のナイフ。


 とにかく――変な形のものがいっぱいだ。

 お姉さんは術師だって聞いてたけど――こんな道具を持ってるなんて、まるで薬師みたい。

 不思議だ。


「変な顔してるけど――ヤーデさんの二つ名は「白薬」だからね。術師だけど毒も薬も扱いは完璧! ――なんだよ。キュロちゃん」


 僕がへんてこ道具を前に首を傾けていると、歯を見せて笑ったソニアが説明してくれた。

 なぜかちょっと胸を張っているようにも見える。


「毒も――なの?」


 突然。真横から声がした。

 さっきまで落ち着いて――なんならその前までは落ち込んでいたはずのユニィが、いつの間にか僕の横に立っていた。


「そうよ。毒と薬は表裏一体。毒も使い方次第では薬になるし、逆に薬も毒になるの。それにね――」


 お姉さんが目を細めながら、「うふふ」と笑い声を漏らした。


「――私の使う術。『毒術』だから」


 ――えーと。


 お姉さんの言葉を聞いたユニィはそのまま固まっている。困惑の感情も伝わってくる。

 ソニアは分かっているのかいないのか、笑顔のままだ。

 僕は――


 ――もしかして、脚竜族がこの人と契約したら、幻の『ピンクラプトル』になれるんじゃない?


 頭によぎったその思い付き(雑念)に。

 ――ちょっとだけ興奮していた。



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