175.灰金_
今回ちょっと短め&諸々の都合で半分ユニィ視点が入ります。
僕は深く息を吸い。細くゆっくりと吐き出した。
意を決して――尋ねる。
『その毒草――どうするつもり?』
――あ。言い間違えた。間違えてないけど。
「え――と。ヤーデさんに渡すんだけど――それよりも毒草とか何言ってるのリーフェ。薬草採取って言ったでしょ?」
『でもユニィ。ずっと前にヨモ草と間違えて毒草を採ってたじゃないか』
「あれ? そうだったっけ?」
ユニィが空の方に視線を向けた。
僕の注意を逸らそうとしているのかもしれないけど、そうはいかない。
『そうだよ。後になって、似てるけど毒草だって教えてもらったでしょ?』
まぁ、誰に教えてもらったのかは記憶にないけどね。
ユニィも「うーん」と唸っているけど。
――それよりも。
『ねぇユニィ。その草、本当に薬草なの? 似た形の毒草とかじゃなくて?』
「大丈夫だよほら。貰ってきた見本とそっくりでしょ?」
そう言うとユニィは、肩に提げていた皮袋から似たような草を取り出して僕の目の前に突き出した。
そのまま得意そうな顔で「この根っこの部分が薬に――」とか言ってるけど――
――どう見ても葉っぱの形が違うよね?
見本の薬草は葉っぱのギザギザが少ないけど、明らかにユニィの薬草はギザギザが多いよね?
まぁだけど――
薬草の効能を力説するユニィを見て思う。
誰かに頼まれているみたいだし、多少は違うやつが混じってても大丈夫かな? ――多分。
――――――
――まったく。
突然やって来て毒草毒草って――リーフェったら失礼なんだから。
確かに昔はよく間違えてたけど――誰だったかに一度教わってからは、いきなり食べ物に入れないように、ちゃんと気を付けてるんだからね。
そう思いながら切々と薬草について語っていると、背後から足音が聞こえた。
「あ。お姉ちゃんいた!」
「――ソニア?」
振り返ると、そこに居たのはソニアとシャルレノさんだった。
慌ててシャルレノさんに頭を下げる。
ソニアの前でひざを曲げて、瞳を覗き込んだ。
「こんなところに来ちゃダメでしょ? どうして来たりなんかしたの」
「えー。だって――お姉ちゃんが薬草をとりにいったって聞いたから見にきたんだよ」
「ソニア――ね、この辺りは魔物も出るかもしれないし、危ないの。それなのに――シャルレノさんにまで迷惑掛けて」
「でも――」
「お願いだから」
ソニアの口が尖る。
最近何だか大きくなったな――と思ってたけど、やっぱりまだまだ子供。
私が守ってあげないと――
「その手に持ってるのって、ナエシ草じゃなくてカノ草でしょ?」
――――あれ?
リーフェからの視線が痛い。




