17.見張りおじさん
あれれ?
今日はユニィと遊ぶ日。
朝からユニィの村に来たんだけど――
いつもは誰もいない門のところに、誰かいる。
しかも僕を見るその目は――
鼓動が早くなるのを感じる。
ツノうさの――いや、そんな生易しいものではない。
あれはまさに――ゴクリと唾を飲む。
――あれはまさに、この前父竜とイタズラしたのがバレた時の――あの時の母竜の目だ。
そんな恐ろしい視線に背筋を震わせていると、どこからか聞いたことのある声がした。
「あー。そいつはここの住人と契約している騎竜だよ。通してやりな」
村の奥から歩いて来たのは、隣村の見張りおじさんだった。
――あれ? なんでここにいるの?
僕は少しばかり首を傾け、そして少しばかり考える。
――そうか! この前サボってたから首になったんだね!
――――――
「アイツは真面目だが融通の効かねぇやつでな。今回のターゲットはゴブリンだって言っておいたんだが――まぁ、あの調子だ」
ユニィの家への道すがら。
見張りおじさんが両手を合わせながら「スマンな」と謝ってくる。
『――もう良いよ。忘れるよ。おじさんがここの見張りも首になったら大変だからね』
ユニィ以外には伝わらないけど、思わず口に出す。
「そうか、分かってくれるか!」
うん。どうやら僕達の気持ちは通じ合ったようだ。
――――――
『ユニィ遊びに来たよ!』
「リーフェー! ――って、あれ? ブロスさん? あの。どうかしましたでしょうか?」
僕と一緒についてきた見張りおじさんを見て、ユニィが急に丁寧な口調になる。
ブロスさんっておじさんの事? ――というか、おじさんまだいたの? サボりは駄目だよ? また首になるよ?
「キューロちゃーん」
ソニアも来たね。うん。今日は思いっきり遊ぶ約束だもんね。他に何かあった気がするけど、気のせい気のせい。
そんなことを考えている間にも、見張りおじさんとユニィの会話は続く。
「いや。嬢ちゃんとこの騎竜に頼み事があってだな――ちょいとひとっ走り、カロンおばさんのところに行って、傷薬を補充して欲しいんだよ」
『えー。これからユニィやソニアと遊ぶのにー』
「分かりました」
――え? そんなに簡単にOKするの?
僕はソニアを見る。
――あれ? 一番反対すると思っていたソニアが黙って言うことを聞いているよ? なんで?
僕の疑問の感情が伝わったのか、ユニィがそっと教えてくれた。
「この村から隣村に行く途中の山裾に森があるよね? そこでゴブリンが大量発生しているみたいで――ブロスさんが討伐するための冒険者を呼んでくれたの。だから――ね? できるだけ協力したいの」
なるほど。そう思いながら、僕は首を横に傾ける。
――もしかして、おじさんって首になったんじゃないの?




