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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第五章 開花
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171.そして今夜は話し合い

 慈愛の巫女。

 それは神の加護に依りて傷を癒す、僕らの希望。

 それは優しげな笑顔で心を癒す、慈愛の象徴。

 そしてそれは――僕の幸せを奪おうとする、笑顔の仮面を被った悪魔。


『僕がいつまでも――黙っていると思ったら大間違いだよ』


 一度ソニアを訪ねてきた彼女に、砂糖たっぷりの(マーロウから貰った)お菓子をあげたのが間違いだったのだ。

 それ以来、彼女は毎度のように――僕のおやつを狙ってくるようになった。


「ねぇ。ソニアちゃん? お姉さんにも――お菓子分けてくれないかな? 今日は『祈り』すぎて少し糖分が足りないの」


 悪魔巫女が僕を無視してソニアに絡みはじめる。

 まぁ、僕の声が聞きとれていないだけなんだけど。

 でも――ね。


 ――今日は。


「この袋が今日のお菓子かしら? 少し貰うわね」


 悪魔巫女が口元に手を運ぶ。


 ――思わず。

 笑みが零れた。


 悪魔には――地獄の業火がお似合いだ。



 ――――――


 僕の足元には今。

 蹲る悪魔巫女が居る。


「み、ず――みず――を――」


 多少水を飲んだぐらいで治まるわけがない。

 何の警戒もせず、()()()()()を口に放り込んだのだから。


『これに懲りたら――人のおやつ(幸せ)には手を出さないことだね。もう二度と』


 何だか、背中の方から視線を感じる気がするけど。

 悲しそうな感情も伝わってくる気がするけど。

 ただの気のせいだろう。多分。


 ――っと。そんなことよりも。

 そろそろ僕もおかき食べようかな。

 確か、ミルクとかを先に飲んでおけば――


「ごちそうさまっ!」


 ――え?


 その声に振り向いた僕が見たものは――


「私、ここのお店のおかき大好きなんだ!」


 またも()()()を逆さにして振る――ソニアだった。



 ――え? なんで?


 納得がいかない。いろいろと。



 ――――――


『ねぇ。ユニィ』


 騒ぐリーフェ達から離れたところで一人。ユニィが空を眺めている。

 私が声を掛けると、ユニィは目線を下ろしこちらを振り向いた。


『今日もこんなところで野営だし――本当にこのままで良いのかしら?』


 私の問い掛けに、ユニィは何も答えない。

 ――私は構わずに言葉を続ける。


『私達だけなら――もっと早く移動できるわ。先に進んで、目的地に一番近い町で待っていた方が安全――』


 気付くとユニィから。辛そうな感情が伝わってきていた。

 いつの間にか、その顔も下を向いている。


 ――ねぇ。何故なの?

 私は続ける言葉を失ってしまった。


「――本当は私もね。そうしたいんだけど」


 そんな私に対して。

 ユニィが俯いたまま口を開く。


「ソニアがね――「それはイヤ」って」


『どういう――こと?』


「理由は私にも話してくれないの。でも――「おねぇちゃんごめんね」って」



 ユニィの肩が――震えていた。


 焦り、寂しさ、悲しみ――感情が渦を巻いているのが分かる。

 でも、その根底にあるのは――


『そうね。それなら――』


少し短いですが、第2エピソードはここまでです。

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