166.デザートの陰で
今回短いです。
砂漠に点在する岩場の陰で昼飯を喰い、休んでいた俺達の前にそいつは現れた。
――おいおい。
ちょっと早いんじゃないか?
まだ昼飯時。おやつの時間にはなってないだろ?
しかし、俺の心の内など知った事かとばかりに、目の前のそいつはその場に留まり続ける。
まるで、己の存在を誇示するかのように。
――ったく。しょうがねぇな。
俺は溜息を吐くと、傍らの道具袋の口を開ける。
そのまま手探りで袋を一つ取り出した。
選ぶのも面倒だし――今日はこれで良いだろ?
俺はその袋を目の前の黒い穴に押し入れた。
とりあえず、今日の分はこれで終わり。
次はまた明日だ。
――そう思ってたんだが。
なんか消えねーな。この穴。
しばらく見ていても――消える様子が無い。
――まぁ。害もねーだろうし、放っとくか。
俺は相棒の合図に合わせて立ち上がった。
脚竜族発祥の地も、もう近い。
そろそろ――俺の調査にも結果が出始める頃合いだ。
――――――
――ふぅ。こんなものかしら。
休憩場所へと軽く流しながら、全力で走った身体を心を――徐々に平静へと近づける。
それでもまだ、気持ちが高ぶっているのかしら。
思わず何も食べずに飛び出してきたけれど――今は。先程から感じている空腹でさえも、何だか心地良い。
――とは言っても。
午後からの事を考えると、さすがに何も食べないわけにはいかないわね。
休憩時間は残り少ないから――急いで昼食を取らないと。
私が休憩場所に戻ると、遠目にリーフェとユニィが何か話し込んでいるのが見えた。
ユニィからは疑問と困惑の感情しか伝わってこないけど――いつもの事ね。
近づきながら――ふと。
リーフェの背中に蠢くものが見えた。
何だろう。何故だろう。
悪寒を感じたのが先か。走り出したのが先か――『アクセラレート』を使ったのが先か。
気付くと私はリーフェの背後に居て。
――『アクセラレート』。
驚くほど鈍く動くその視界の中。
その蠢きを叩き潰していた。
――リーフェと共に。
次話から第2エピソードです。




