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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第二章 おつかい騎竜
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16.披露

『じゃあいくよー。ポケット!』


 僕は二竜(ふたり)の目の前で『ポケット』を発動する。言葉に出さなくても良いんだけど、その辺りは()()()()()ってやつだ。


 僕達の目の前。三竜(さんにん)で輪になった真ん中あたりに黒い穴が現れる。

 ――どう?

 ちょっと胸を張って二竜(ふたり)を見る。


『期待通り地味ね。流石リーフェね』


『ふーん』


 二竜(ふたり)の反応は何だか微妙だ。

 確かに見た目は地味かもしれない。だけど、僕も無策でこの場(モテ技披露の場)に来たわけではない。


『まぁ、見ててよ』


 そう言うと、僕は傍らに置いていた4m程度の物干し竿を掴む。

 そして、当然――


『どう? こんな長いものも入るんだよ?』


 現時点で分かっている最大の長所。『どんなに長いものでも収納できる』ことを最大限に利用したパフォーマンスだ。

 ――これでどう?


『まぁ、リーフェにしてはまぁまぁね。でも――』


『――でも?』


『これって何の役に立つの? ねぇ。うっかリーフェ?』


 散々溜めてサギリが言い放つ。最後は少し笑みを浮かべながらだ。

 ――図星なだけにとっさに反論できないのがちょっと悔しい。まだ用途は考え中なのだ。

 それでも、反論しようとして口を開きかけた僕に親友(マーロウ)が声を掛ける。


『これってもしかして時空魔術じゃね?』


 ――時空魔術。それは時間と空間に干渉する魔術の総称である。その魔術が及ぼす影響の大きさと希少性ゆえに、伝説と称される魔術である。


『まだ分かんないよ。マーロウ』


 僕は正直に答える。

 確かに『ポケット(このスキル)』の特徴は、時空――特に空間を制御する術と一致している。それに、伝説の魔術という響きはとてもカッコいいので、気持ちとしては肯定したい。

 だけど、まだこの『ポケット』は検証中。確実ではないし、何より間違っていた場合が厄介だ。

 僕はチラリとサギリを見ながら頷いた。


『――なるほどね。だけど、少なくとも面白そうなスキルだな。()()ってことは、検証段階ってことなんだろ? 今度俺も混ぜてくれよ』


『そうだね。一竜(ひとり)でできることには限度があるし、過去の文献調査とかはマーロウの方が得意だよね? こちらからも是非お願いするよ』


 そう。彼は脚竜族にしてはインドア派で本をよく読んでおり、文献調査なども得意なのだ。()()()()()()()であるが。


『ふーん。じゃあ私も混ぜてもらおうかしら』


 サギリがそんなことを言い始めた。むぅ。なんでここで口を挟むの?


『じゃあ、今度三竜(さんにん)で検証しようぜ』


 でも、僕が口を開く前にマーロウが返事をしてしまう。


『良いだろ? その方が検証も捗るし』


 笑顔でそう言われると断れないじゃないか。

 ――こうして()()()()三竜組(さんにんぐみ)で、僕のスキル検証をすることになるのだった。



 ――――――


 ――何だかちょっとイライラする。


 リーフェが進化したとは聞いていたけど、あのニヤケ具合は何?

 何を考えているか大体わかるけど、あなたみたいなお子様なんて、誰も相手するわけがないでしょ?

 思わず憎まれ口を叩いてしまう。


 ――やっぱりイライラする。


 リーフェの使うスキルを見て唖然とする。どう見ても時空魔術だ。

 ――にも拘らず――何? この大道芸みたいな使い方は?

 思わずまた憎まれ口を叩く。


 ――イライラが募る。


 リーフェとマーロウが二竜(ふたり)だけでスキル検証をするようだ。

 ――ちょっと私も混ぜてよ。とっさに口に出る。

 一瞬リーフェが口を開きかけたが、マーロウが先んじてとりなしてくれた。


 でも――

 口の動きで『素直になれよ』――ってなにそれ? 私はいつも素直でしょ!


 ――やっぱりこのイライラは、()()()うっかリーフェにぶつけようかな。


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