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微睡む騎竜の進化日記  作者: 白王
第四章 乗合騎竜
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158.平静と動揺

「――驚いたか」


 鑑定おじさんの問い掛けに、僕は首を縦に振る。

 本スキル所有者は成人前に命を落としているって――一体どういうこと?


「私も驚いたぞ。まさか――成人した『連環』のスキル所有者に出会うとはな」



 その後。

 僕達は――おじさんの話を聞いた。


 おじさんによると、『連環』のスキル所有者は数年ごとに現れるらしい。

 過去の文献にも載っているし、おじさんも何度か鑑定したことがあるそうだ。

 そのスキル所有者達は全員が未成年で。

 そして全員が成人(満12歳)を迎えずして死んだ。

 ――周りの人々を巻き込んで。


『そんなの――おかしいよ。だって『リンケージ』の術について調べた時、そんな話はどこにも出て来なかったじゃないか。あのマーロウでも知らなかったんだよ。そんなの――絶対に絶対におかしいよ!』


 僕はおじさんの眼前に詰め寄った。

 おじさんには僕の言葉は聞き取れないけど――それでも。言わずにはいられなかったから。


 そんな僕の肩に。

 手が添えられた。


「リーフェ」


 ユニィの落ち着いた声がする。

 ――なんで。なんでそんなに落ち着いていられるの?


「ウィルノレジスさん。もしかしたら――なんですけど、その方々に『リンケージ』の術は」


「ああ。こんな術は初めて見る。恐らく――これも新術だろう」


「やっぱり。――――分かりました。ありがとうございました」


 頭を下げるユニィから伝わる感情は――凪。

 凪いだ日の草原(くさはら)のような。

 そんな静かな感情。


「ああ。役に立ったのであれば僥倖だ。――幸運を」



 ――――――


『ねぇ。ユニィ――貴女、本当に大丈夫なの?』


「うん。大丈夫だよ」


 鑑定おじさんとの面談を終えて。

 僕達は聖殿の廊下を歩いていた。


 ユニィは平気そうにしているけど――僕の頭の中は、さっきのおじさんの話でいっぱいだ。

 これまでのスキル保有者は、全員成人前に命を落としている。

 それも「暴走した『力』による事故」や「魔物による襲撃」で周りの人を巻き込んで――だ。


 言われてみれば。

 これまで魔物に襲われたことが何度もあった。

 遺跡でユニィが居なくなったり、倒れたりしたこともあった。

 そもそもユニィと出会った時も、魔物(卑魔族)に襲われていたし。

 もし――僕があの時ユニィと出会っていなかったら。


 ――ちょっと嫌なことを考えてしまった。


 僕は頭を振って、嫌な想像を振り払う。

 変な事を考えてると、それが現実になっちゃうかも――


『ユニィ?』『ユニィ!』


 突然。

 横を歩くユニィの感情が乱れた。

 思わず叫んだ僕の耳に聞こえたのは。


「ああ。ようやく会えましたね」


 ――氷のお兄さんの声だった。




「それではまたお会いしましょう」


 礼儀正しく一礼をして去っていく、氷のお兄さん。

 その後姿を――僕は遠い目で見つめていた。


 ――なんで。なんでこういう事になったんだろう。


 僕の目の前には、砂の詰まった布袋が2袋置いてある。

 お兄さんの言葉を借りると「毎日4時間。この砂袋を背負って走ると良い」らしい。

 何が良いのかさっぱり分からないけど――まぁ良いか。

 訓練に取り入れたら脚力が付きそうだし。



 ――そういえば。


 「あの氷の巨人みたいに体を大きくするのは、どうやって術を使ったら良いのか?」って質問。


 結局――答えてもらえなかったね。


次話が第四章最終話の予定です。


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