150.強力な術はカッコ良い
『そんなこと言われても僕にも分かんないよ』
目が覚めたらいきなりサギリに詰め寄られたけど――
あれだよね。なぜか『ポケット』の大きさが大きくなったやつ。
最近無かったから忘れてたけど――そもそも僕にも良く分かんないよ。
いつまでもしつこいサギリを振り払いながら、僕は真・光球おじいさんに話しかけた。
『ねぇ――なんだか凄い雷術だったんだけど――』
「うぬ? おぉ。まぁ儂も――昔はそれなりに鳴らしておったからのぅ。そりゃあもう、術をちょいと使っただけで女子達がキャーキャーというて、モテまくりじゃったわい」
――いやいや。
今僕が聞きたいのはそういうことじゃなくて、なんでわざわざ僕が足止――
――え?
今、モテまくりって――言った?
僕は全てを忘れて、思わずおじいさんの顔を凝視する。
「――なんじゃ。お主の『ウォーターハンマー』も――十分な威力じゃったろ? 自分に当てるとか、阿呆かと思うたが」
『――え?』
「ぬ?」
このおじいさん何言ってるの――って、そういえば出会った時から変な事を言ってたんだった。
――ああっ!
そうか。
うん、そうか――そうだったんだね。このおじいさん――――もうボケてるんだね。
ボケてるんなら、良く分からないことをしてもしょうがないよね。うん。
何だか――スッキリしたよ。
「それにしても――少し遅くないですか?」
ユニィがおじいさんと話す声が聞こえる。
ねぇユニィ。
おじいさんに聞いたって駄目だよ。もうボケてるんだから。
「――そうじゃの。じゃが、いつまた蟻が来るかわからんしの。儂等はここで待つしかないじゃろ」
「でも――そうだ。リーフェも見てっ。『サーチ』っ!」
ユニィが突然こちらを振り向いた。びっくりしたけど――
『何も――見えないよ?』
ユニィの瞳が紫に光るだけで何も起こらない。
――ああ。
そうか。
「――近くには魔物はいません。今なら――大丈夫です!」
――――――
『――何これ?』
洞窟を出た僕達が見たのは一面の――氷の世界だった。
氷柱がいくつも立ち上がり、海は凍りついている。
鑑定おじさんが「これは!」とか言いながら、なぜか氷柱の方に走って行っちゃったけど――
いや。ほんと何これ?
どうやったらこんなことになるの?
「――すみません。少々通してしまいました」
驚く僕の後ろから、氷のお兄さんの声がした。
何だ――無事だったんだね。
いつまで経っても来ないから、もしかして何かあったと――
そこで、目の前のユニィの顔がおかしいことに気付いた。
目が大きくなってるし、何より驚きの感情が伝わってくる。
みんなの顔を見ると、真・光球おじいさんを除いたふたり――ユニィとサギリは目が大きくなっていた。
――因みにおじいさんは光ってて良く見えない。
――いやいや。
みんなして冗談は止めて――よ?
ゆっくりと振り向いた僕の目に映ったのは――
5mを超える氷の巨人だった。
――うん。
お兄さんが洞窟に入れなかった理由は分かったよ。
分かったけど――
ねぇ、それってどうやってやるの!?
とってもカッコ良いんだけど!




